メトロポリタン美術館のコスチューム・インスティチュートで「CAMP:Note on Fashion 」展が2019年9月8日(日)まで開催されています。

 このコスチューム・インスティチュートのガラ・パーティは毎年大きな話題を呼ぶもので、今年のガラでもレディーガガが披露したステージなみのパフォーマンスが注目を集めました。

 今季のテーマは「キャンプ ファッションについての覚え書き」。

 アメリカの作家/思想家のスーザン・ソンタグが、1964年に書いたエッセイ『キャンプについてのノート(Notes on “Camp”)』をテーマにしています。

 もともとフランス語の動詞「se camper (仰々しく挑発的な振る舞いをする )」に由来する言葉であり、20世紀初頭にはすでに「camp(キャンプ)」という英語が使われており、当時は同性愛者を表す言葉でもあったようです。

 ソンタグは「キャンプ」を「平凡ではないもの、不自然なもの、過剰なものへの愛」「巧妙に逸脱されたもの」「アンドロジナスの趣味」を好む感受性として定義しています。

 皮肉たっぷりでユーモラスであったり、あるいは極端なものであったりするド派手なスタイルであり、パロディやパスティーシュ、誇張や過剰、引用などを用いた、メタファッションともいえます。

 「キャンプ」の日本語訳はないのですが、大まかに「悪趣味」「やりすぎ」「社会風刺にとんだ」「反骨的な」といった概念と考えていいかと思います。

 会場では、「キャンプ」という言葉が登場した時代背景を見せたり、またロココ様式といった数々の歴史的な「キャンプ」様式を見せたりして、幅広く展示しています。

 世の中の「約束ごと」「良識」「シック」をくつがえしてみせるのがキャンプであって、「物議を醸す」というのが大きなポイントといえそうです。

 この展覧会はグッチの後援も多く受けており、プレス記者会見では、アレッサンドロ・ミッケーレがスピーチをして、「キャンプは、まさに自分のこと。キャンプとは、自由であること」と述べていました。

 たしかにアレッサンドロのグッチといえば、まさにキャンプ趣味。

 今まで「女らしさ」とか「男らしさ」に分けられていたファッションがジェンダーレスになり、自由自在なスタイリングで、あらゆるスタイルが混ぜられたといえます。

 悪趣味にひそむ反社会性、良識をくつがえそうとする力、目立ちたがる過剰な自己主張。

 シックや洗練とは別方向にある、そうしたファッションの側面を見ることができる、刺激的な展覧会をぜひ見てみて下さい。

Camp:Note on Fashion

所在地 The Metropolitan museum of Art 1000 5th Ave, New York, NY 10028
開催期間 開催中~2019年9月8日(日)
開館時間 10:00~17:30(日~木曜)、10:00~21:00(金・土曜)
https://www.metmuseum.org/

黒部エリ

ライター、作家。東京都出身。大学卒業後、「アッシー」他の流行語を生み出すなど、ライターとして情報誌から広告まで幅広く活動した後、94年よりNY在住。ファッション、ビューティー、アートやレストラン、人物インタビューなどなど、旬な情報を発信し続けている。著書に『生にゅー! 生で伝えるニューヨーク通信』(文藝春秋)などがある。
https://erizo.exblog.jp/

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文・撮影=黒部エリ