メトロポリタン美術館のコスチューム・インスティチュートで「CAMP:Note on Fashion 」展が2019年9月8日(日)まで開催されています。

Bertrand Guyon (French, born 1965) for House of Schiaparelli (French, founded 1927). Ensemble, fall/winter 2018–19 haute couture. Courtesy of Schiaparelli. Photo © Johnny Dufort, 2019 The Costume Institute, The Met

 このコスチューム・インスティチュートのガラ・パーティは毎年大きな話題を呼ぶもので、今年のガラでもレディーガガが披露したステージなみのパフォーマンスが注目を集めました。

 今季のテーマは「キャンプ ファッションについての覚え書き」。

 アメリカの作家/思想家のスーザン・ソンタグが、1964年に書いたエッセイ『キャンプについてのノート(Notes on “Camp”)』をテーマにしています。

 もともとフランス語の動詞「se camper (仰々しく挑発的な振る舞いをする )」に由来する言葉であり、20世紀初頭にはすでに「camp(キャンプ)」という英語が使われており、当時は同性愛者を表す言葉でもあったようです。

 ソンタグは「キャンプ」を「平凡ではないもの、不自然なもの、過剰なものへの愛」「巧妙に逸脱されたもの」「アンドロジナスの趣味」を好む感受性として定義しています。

 皮肉たっぷりでユーモラスであったり、あるいは極端なものであったりするド派手なスタイルであり、パロディやパスティーシュ、誇張や過剰、引用などを用いた、メタファッションともいえます。

Jeremy Scott (American, born 1975) for House of Moschino (Italian, founded 1983). Ensemble, spring/summer 2018. Courtesy of Moschino. Photo © Johnny Dufort, 2019 The Costume Institute, The Met

 「キャンプ」の日本語訳はないのですが、大まかに「悪趣味」「やりすぎ」「社会風刺にとんだ」「反骨的な」といった概念と考えていいかと思います。

 会場では、「キャンプ」という言葉が登場した時代背景を見せたり、またロココ様式といった数々の歴史的な「キャンプ」様式を見せたりして、幅広く展示しています。

こちらのヴィンテージドレスは、2019年のグラミー賞でカルディBが着用していたミュグレーのオートクチュールのもの。
こちらはカンヌで物議をかもしたビョークの白鳥ドレス。Marjan Pejoski (British, born Macedonia, 1968). Dress, fall/winter 2000–2001. Courtesy of Marjan Pejoski. Photo © Johnny Dufort, 2019 The Costume Institute, The Met
「二度目の子ども時代」というカテゴリに分類された服は、コム・デ・ギャルソンの髙橋真琴オマージュの服が展示されています。
マクドナルドやバドワイザーをパロディにしたジェレミー・スコットによるモスキーノのモード。
セックスをテーマにした挑発的なモードも目を惹きます。Walter Van Beirendonck (Belgian, born 1957). Ensemble, spring/summer 2009. Courtesy of Walter Van Beirendonck. Right: Vivienne Westwood (British, born 1941). Ensemble, fall/winter 1989–90. Courtesy of Vivienne Westwood Archive. Photo © Johnny Dufort, 2019 The Costume Institute, The Met
アレッサンドロ・ミケーレによるグッチのアンサンブル。トロンプルイユの手法があしらわれています。Alessandro Michele (Italian, born 1972) for Gucci (Italian, founded 1921). Ensemble, fall/winter 2016–17. Courtesy of Gucci Historical Archive. Photo © Johnny Dufort, 2018 The Costume Institute, The Met
ロココ調をパスティーシュしたモード。歴史を踏襲したファッションは少なくありません。

 世の中の「約束ごと」「良識」「シック」をくつがえしてみせるのがキャンプであって、「物議を醸す」というのが大きなポイントといえそうです。

 この展覧会はグッチの後援も多く受けており、プレス記者会見では、アレッサンドロ・ミッケーレがスピーチをして、「キャンプは、まさに自分のこと。キャンプとは、自由であること」と述べていました。

 たしかにアレッサンドロのグッチといえば、まさにキャンプ趣味。

 今まで「女らしさ」とか「男らしさ」に分けられていたファッションがジェンダーレスになり、自由自在なスタイリングで、あらゆるスタイルが混ぜられたといえます。

単に変な恰好をするのがキャンプかといえば、そういうわけではなく、やはりそこには「社会やタブーに挑戦する」姿勢があると思います。

 悪趣味にひそむ反社会性、良識をくつがえそうとする力、目立ちたがる過剰な自己主張。

 シックや洗練とは別方向にある、そうしたファッションの側面を見ることができる、刺激的な展覧会をぜひ見てみて下さい。

Camp:Note on Fashion

所在地 The Metropolitan museum of Art 1000 5th Ave, New York, NY 10028
開催期間 開催中~2019年9月8日(日)
開館時間 10:00~17:30(日~木曜)、10:00~21:00(金・土曜)
https://www.metmuseum.org/

黒部エリ

ライター、作家。東京都出身。大学卒業後、「アッシー」他の流行語を生み出すなど、ライターとして情報誌から広告まで幅広く活動した後、94年よりNY在住。ファッション、ビューティー、アートやレストラン、人物インタビューなどなど、旬な情報を発信し続けている。著書に『生にゅー! 生で伝えるニューヨーク通信』(文藝春秋)などがある。
https://erizo.exblog.jp/

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文・撮影=黒部エリ