触れることで、作品は変化し
人は作品の一部となる

 約2000平方メートルに及ぶ展示スペースで展開される“境界のない世界”とはどのようなものだろうか。

 「僕らがここで作っているのは、アートが物理的な制約を超えて、時には部屋から出て移動しながら、作品同士が互いにコミュニケーションし、影響を受け合い変化し、時には混ざり合っていく、そんな境界のないアート群による一つの世界」と、チームラボ代表の猪子寿之氏は語る。

 作品と作品とを仕切るものは何も無く、作品が固定の場所にとどまらず、移動して他の作品と触れ、そこで新たな表現が生まれる展覧会。まずは、作品を見てみよう。

 入り口は「アトリエ」と「エキシビジョン」の2つに分かれており、好きなほうから入ることができる。共に、奥でつながっているが、作品への最初のアプローチは異なる。

 「アトリエ」では、来場者が紙に蝶やカエル、ワニなどの生き物を描き、それをスキャンすると、データ化された絵が動き出し、この生態系を構成する一つの命となる。

 カエルは蝶を捕食し、トカゲはカエルを捕食する。しかし、捕食する側が増えると、食べる対象が無くなり滅びてしまう。花は、人々がじっとしていると咲き、人々が踏んで歩き回ると散っていく。蝶は、花がある場所で増える。

 現実の自然界と同様、ここでは、生きものたちが、他の生きものを食べたり、食べられたりしながら、共に同じ1つの生態系をつくっている。

 この展覧会に順路は無く、「エキシビジョン」の入り口から入った観客は、思い思いに進み、好きなエリアで作品と触れ合うことができる。

 メインの空間では、高さ11メートル、横幅約27メートルの壁を伝って、滝の水が落ち、床へと流れる。観客が水流に触れたり、その上に立ったりすると、水流はその部分を避け、流れが変化する。降り注ぐ水の流れに花が当たると花は散り、風景が一変する。

文・撮影=景山由美子