素朴な見た目には分からない
洗練された究極に贅沢なデザート

 さてさて、お楽しみのデザートですが、ポルトガル菓子で有名なのが「エッグタルト」。日本でも一時期流行りましたね。実はルーツはポルトガルで、「パステル・デ・ナタ」と呼ばれる、最もポピュラーなお菓子です。

日本でも流行ったエッグタルト「パステル・デ・ナタ」。

 なんとなく、カスタードパイを想像してしまいますが、実際はパイのカップで焼いたプリンのような感じ。パイ部分のパリッとした中に、クリームがぷるるんトロトロと、まさにとろけるような美味しさです。

左:世界遺産のジェロニモス修道院。
右:海洋国ポルトガルの都を守った、河岸のベレンの塔。

 どのお店でも見られるパステル・デ・ナタですが、一番有名なのは、リスボン西部のベレンにあるお菓子屋さん。ベレンはリスボン市街から少し離れていますが、ベレンの塔や発見のモニュメント、世界遺産のジェロニモス修道院など見所もたくさんですので、お菓子のためだけでなく訪れたいスポットです。

カステラの原型となった「パォン・デ・ロー」。

 こちらは、カステラの原型となった言われるお菓子「パォン・デ・ロー」。しかし日本のカステラとは形も食感も違います。カステラよりもっとキメが細かくスフレのようですが、スフレよりしっとりと生地が詰まっている感じ。甘すぎず、卵のやさしい香りと、柔らかな食感がとてもおいしいお菓子です。

 カステラは、きっとたくさんの工夫と試行錯誤を経て今の形になり、日本のお菓子として定着したのですね。そういった違いを見るのも旅の醍醐味です。

ポルトガルのクリスマス菓子「ボーロ・レイ」。

 こちらはクリスマス菓子の「ボーロ・レイ」、その名も王様のお菓子。その名にふさわしく、ナッツ、フルーツ、スパイスをふんだんに使った贅沢なお菓子です。海洋貿易で輸入品を多く手に入れることのできたポルトガルならではのリッチさなのでしょう。また、スパイスの効かせ方が絶妙で、主張しすぎず、ほんのり香る感じが、とても上品なおいしさです。

左:米粉のカップケーキ「ボーロ・デ・アローシュ」。
右:手前はココナッツのタルト、奥はミニサイズのシュークリーム。

 ほかにも、シュー生地のお菓子や、米粉を使ったケーキ、ココナッツやドライフルーツ、アーモンドなどを使ったお菓子など種類も豊富で、お菓子のショーケースの前に立った時は、どれにするか決められず困ってしまいます。

 どのお菓子にも共通して思うのは、見た目は素朴ですが、その素朴さに似つかない繊細でエレガントなおいしさであること。その風味を支えるのは、とにかく、お菓子のメイン素材になる卵がとてもおいしいこと、そして砂糖をたくさん使える国だったからこそ、その加減をよく知っているというのがミソなのではないかと思います。贅沢で甘い物が増えていますが、本当のおいしさは、加減を知っていることが大事なのですね。

 日本と古くから深いつながりのあるポルトガル。そこから伝わってきたお菓子のルーツを巡る旅は、まるで伝来した時をさかのぼってみているようで、いつもより楽しく、そしておいしい旅になりました。みなさまも機会があったらぜひ、何かのルーツを巡る旅、出かけてみてはいかがですか?

藤原亮子 (ふじはら りょうこ)
イタリア・フィレンツェ在住フォトグラファー&ライター。東京でカメラマンとして活動後、'09年、イタリアの明るい太陽(と、おいしい食べ物)に魅せられて渡伊。現在、取材・撮影・執筆活動をしつつ、イタリアの伸びやかな景色をテーマに写真作品も制作中。イタリアでの日々をつづったフェイスブックはこちら。 https://www.facebook.com/chococogogo

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文・撮影=藤原亮子