3万平方メートルにもおよぶ広さのモザイク画博物館
ガージアンテップといえば、シリアとも国境を接するトルコ南東部にある都市。かつて盛んだった中東地域交易の中心地としてヒッタイト、ペルシャ、ローマ、ビザンティン、アルメニア、オスマン帝国など様々な大帝国の支配を経験してきた。
そんななか、5年前に鳴り物入りでオープンしたのがゼウグマ・モザイク博物館だ。
1990年代にビレジック・ダムの建設で水の底に沈んでしまったゼウグマ古代都市から発掘・保護できたローマ時代のモザイク画が展示されており、3万平方メートルという広大な敷地に建つ。展示サロンだけでも7000平方メートルを超える広さで、展示されているモザイク画の合計面積は1700平方メートルにもおよぶ。これは、世界最大と言われていたチュニジアのバルド国立博物館を超える規模だ。
そもそもゼウグマとは、ガージアンテップ郊外のユーフラテス川沿いにかつて繁栄した古代都市のこと。
紀元前300年にアレキサンダー大王の将軍、セレウコス1世によって創建された。紀元前64年にはローマ司令官ポンペイウスによってアンティオコスに町ごと贈呈され、紀元前31年以降、完全にローマ帝国の支配下となった。
「橋・通路」という意味を持つ「ゼウグマ」という名がつけられ、繁盛期には8万以上の人口があったとされている。
そんな豊かな歴史的背景を持つゼウグマのモザイク博物館は、確かに見応えたっぷり。今ではトルコ南東部の産業都市としてイスラム教色のイメージが強いガージアンテップの町並みだが、ひとたびこの博物館に入ると、それはそれはあでやかな古代ローマ時代のモザイク画に対面できる。
保存状態がよく、高度な修復技術が駆使されたモザイク画たちは、細かで色鮮やか。数千年前の作品とは到底思えない完璧さだ。入り口すぐのところには当時の町の様子が再現されており、美しいモザイク画を見ながらその中を歩くと、すっかり気分はローマ人。
文・撮影=安尾亜紀