チェコ・モラヴィア地方の不思議な光景

 チェコといえば世界遺産の古都プラハを訪れる人が多いなか、近年多くの写真愛好家を魅了する場所がモラヴィア地方の片田舎にひっそりと佇んでいます。その場所は通称「緑の大草原」「緑の絨毯」「モラヴィア大草原」「チェコのトスカーナ」と色々な呼び方をされていますが、その名の通りまるで海が波打つような緑の絨毯が広がっています。

 この大草原のある場所は、チェコの商業都市ブルノから車で約1時間のキヨフという町の近く。ブルノからの道中、キヨフの手前まではヨーロッパでは非常によくある小麦畑の風景なのですが、キヨフの町に入る位のところから波打つような不思議な小麦畑の情景に変わっていきます。

うねるような小麦畑。緑の美しさは4~6月がお勧めシーズン。

 この辺り一帯は過去に鉱山として栄えた歴史があるとのこと。その地形の名残を現在でも残して小麦畑として使用しているため、4~6月の小麦の栽培時期には一面に緑の絨毯が波のようにうねる不思議な情景が見られるのです。

 実はチェコの国民でも知っている人の方が少ないこの場所。キヨフの町へ観光目的で訪れる人も少ないため、まだまだ秘境として紹介できる、チェコの自然豊かなスポットのひとつです。キヨフからも公共交通機関が乏しいため、できればレンタカーか、体力のある方はサイクリングなどで見て回るのがいちばん適しています。

 春先には菜の花が黄色の鮮やかな花を咲かせます。緑と黄色と青空の思いがけない美しい光景に出会えることも十分ありえますので、しばらく滞在して、最高の撮影タイミングを調整するのもいいかもしれません。

菜の花のシーズンは黄色と緑の絨毯が敷き詰められたような大地となります。

文・撮影=クレメントゆみ子