日没後からはいよいよ“ハッピー・ラマダン”

ドバイでもっともヒップなレストランQbara(キュバラ)もイフタール・メニューを用意していて、日没~20時30分まで提供してくれる。245ディルハム。

 ジモティたちは一家団欒、大家族みんな集まり自宅でイフタール。レストランで食事をするのは観光客ばかりかというと、そうでもない。一族郎等みなそろってレストラン貸し切りでイフタールを食べたり、シーシャ(水タバコ)を楽しみに集まったりといろいろ。日中の断食を終え、いつも以上に賑わいをみせるドバイの雰囲気に、ようやく“ハッピー・ラマダン”な感じがつかめてきた。

イフタール・メニューは3種類のスープから一品と5種類の温かい前菜に4種類のメインディッシュ、3種類のデザートが楽しめる。長時間調理のラム肉やアイナメの“ハッラ”もおいしい。
左:高栄養低カロリーのフムスやデーツなどがテーブルに並び、コロッケのような“ファラフェル”といった胃にやさしい温かな前菜が続々と出てくる。
右:ふだんシャンパンやワインがディスプレイされる場所は、空のボトルを置いてラマダン・アピール?

Qbara(キュバラ)
所在地 Oud Metha Road, Wafi City, Dubai, UAE
電話 +971-4-709-2500
URL http://www.qbara.ae/

アルファヒディ歴史地区にある古い建築様式のSMCCU(文化交流センター)。観光客のためだけでなく、外国人が人口の80%を占めるUAEならではの交流センターだ。

 とはいえ、まだまだイスラム文化やラマダン時期の断食については分からないことが多い。そこで現首長がエミラティ(UAE人)と外国人の交流のために開設した文化交流センターを訪問。ここでは白いカンドゥーラを着た男性スタッフと黒いアバヤを着た女性スタッフが、かわるがわるに弾丸トークであらゆることを解説してくれる。それにしても……モスクの広報といい、エミラティは断食しているにもかかわらず、どうしてこんな弾丸トークの活力が残っているのだろう……。

左:アバヤに身を包んだ女性も弾丸トークで、なかなかの迫力。ドバイはとても進歩的で、高い地位につく女性も多い。こうしたボランティア活動でも前面に女性が出てくる。
右:カンドゥーラを着た男性からいただくアラビックコーヒー。アラブも日本に負けないくらい“おもてなし”の文化。モロッコだとミントティーをまず一杯だが、中東アラブではコーヒーです。

 このセンターでは先ほどのモスクで説明された以上に細かいことを解説してくれる。女性のアバヤが黒いのは陽射しを遮るためで、男性に強要されて着ているのではない。ファッションやヘアスタイルに無頓着でいられるので、女性が好んで着ている。口元を覆うブルカは、歳がバレる口元を隠す役割があり、また眼だけ出していると神秘的でモテるなどなど。けっこうな本音トークで笑わせてくれる。

左:トークの合間、礼拝の時間になると全スタッフが祈りに向かう。撮影OKのモスクでも祈りのシーンを撮るのはご法度だが、ここではどうぞ撮影して~というスタンス。悪いことをしているわけではないのでということらしい。
右:約1時間半にわたっての解説の後、イフタール。スタッフも一緒に食事をしながら、さまざまな国の人たちと交流する。

 とまれ、断食の行はかつてのムハンマドの苦難を追体験するべく行われるためにはじまったが、空腹や渇きを我慢するというツラいものではなくって、神の思召通りに過ごすことで得る幸福を感じでいることがわかった。みんなこの時期は信仰が深められるので、ラマダンの来るのをこころ待ちにしているらしい。仕事も学校も早めに切り上げられるし、日没後にはご馳走が待ってるしというとてもポジティブな雰囲気なのだった。

 ただ、もちろん体には負担がかかるので妊婦や小さな子供は断食に参加しない。子供にとってはラマダンを断食で迎えられるようになると、大人に近づいたという気分になるものらしい。

SMCCU(文化交流センター)
所在地 House 26, Al Mussallah Road, Al Fahidi District, Dubai, UAE
電話 +971-4-353-6666
URL http://www.cultures.ae/

2015.07.21(火)
文・撮影=大沢さつき