名門「カステッロ・ディ・アマ」が続ける面白い活動

 フィレンツェからシエナ方面へ向かうこと約30分。高速道路(SS)を降り、一面に広がるブドウ畑に目を奪われながらさらに車を走らせること30分。辿り着いたのはキャンティ・クラシコの名門「カステッロ・ディ・アマ」だ。

中世の面影を残す石造りの建物はキャンティ地方の田園風景にぴったりはまる。(C) Alessio G. Guarino
フィレンツェから車で約1時間。曲がりくねる田舎道をさらに奥へと進む。(C) Alessio G. Guarino

 ワイン業界では優れたエノロゴ(醸造家)として知られるオーナーのマルコ・パッランティ氏は、どちらかと言えば「低価格の早飲みワイン」と一般に認識されていたキャンティ・クラシコを、熟成タイプの価値あるワインへと押し上げた人物である。広大な土地を所有しながらもあえて少量のブドウを育てることで、クオリティの高い「キャンティ・クラシコ・リゼルヴァ」づくりを成功させ、2003年、その功績からイタリアのグルメ誌「ガンベロ・ロッソ」のワインメーカー・オブ・ザ・イヤーを受賞した。

質の高いキャンティ・クラシコづくりに成功し、その名をワイン業界に知らしめたカステッロ・ディ・アマ。(C) Alessandro Moggi
左:ブドウ畑に囲まれた美しいキャンティ地方の丘にそびえるカステッロ・ディ・アマ。(C) Alessandro Moggi
右:大事に育てられたブドウはクオリティの高いワインへと変貌する。(C) Alessio G. Guarino

 さて、カステッロ・ディ・アマはワインづくりだけでなく、非常に面白い活動を続けていることでも知られている。それは、毎年、世界各国の著名なアーティストを招き、彼のワイナリーやワインからインスパイアされた作品(インスタレーション)を制作してもらうという試みだ。ワイナリーを訪れたアーティストたちは広大なブドウ畑の中から自分の好きな空間を選び、そこに漂う空気感や景観に刺激を受け、思い思いの足跡を残していく。

文=村本幸枝(アッティコ)