竹加工工場の三代目が手がける良質で洗練された竹製品

 台湾中部の南投県に位置する「竹山」。人口5万2千人ほどの小さな町ですが、近年は若者たちが故郷へ戻り、地方創生の動きが活発になっています。

 竹山はその名のごとく、竹の産地として知られています。かつては竹材や竹製品の生産で栄え、全盛期には1,500軒の竹工場があったといいます。

 今回紹介する「元泰竹藝社」もそのひとつ。以前は竹製の編み棒や箸、竹細工などを製造し、日本や欧米へ大量に輸出していたとのこと。しかし、時代の変化とともに安価なプラスチック製品に取って代わられるようになり、店を畳まなければならないという苦境に陥りました。

 そんな中、十数年前に里帰りし、家業を継いだのが三代目の林家宏さんです。彼は竹製品の新たな可能性を探り、竹が環境に優しい素材であることに着目しました。環境保護に対する意識が高まっていた時期ということもあり、廃棄された竹材を用いて歯ブラシやストローなどを製作したところ、大きな注目を集めるようになりました。

 その後、新潟県と交流する機会に恵まれ、2017年には燕三条で催されているものづくりの現場を体感できるイベント「燕三条 工場の祭典」に出展。イベントで見た多種多様な日本製の生活用品にインスピレーションを受け、アウトドア用のカップやビアカップなどの開発を手がけるようになります。これらは台湾固有の動物や海洋生物などが描かれ、現在の人気アイテムとなっています。

 そのほか、ペン立てやお香立てなど、洗練された日用品を次々と開発している林さん。今後の目標を尋ねてみると、「『無印良品』のような竹製品の店を作りたい」という答えが返ってきました。情熱溢れる林さんがこの夢を実現させる日は、そう遠くはないはずです。

 また、林さんは町おこしにも熱心で、竹山にある「台西客運バス」のターミナルを再生させた複合施設で、仲間たちと一緒にスイーツ店「台西冰菓室」を開いています。ここでは竹の筒に入ったソフトクリームや烏龍茶などが味わえますが、竹のカップはお土産に持ち帰ることができます。

 竹山を訪れたら、まずは旧バスターミナルでひと休みし、それから元泰竹藝社で買い物を楽しんでみましょう。なお、商品は台北のセレクトショップでも扱っています。日本からは、オフィシャルサイトや日本の代理店のサイトから購入できます。

2022.10.08(土)
文=片倉真理
撮影=片倉佳史、片倉真理、林家宏(オーナー写真)