宝塚歌劇団で心に残る名作を手掛けてきた演出家・上田久美子による書き下ろし戯曲「バイオーム」が2022年6月8日(水)よりスタート。俳優・古川雄大さんに作品への意気込みや役作りに向けた思いを伺いました。

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「人間の世界と植物の世界との対比が、とても面白く描かれている作品です」

――スペクタクルリーディング「バイオーム」は、「五感を揺さぶる朗読劇」として上演される作品だそうです。代々続く政治家一家と、植物たちの物語とが描かれていくようですが、脚本を読まれてどんな感想を抱かれましたか。

 物語の導入はファンタジックな世界観で、まるで御伽噺のようなんですけれど、いつの間にか生々しい人間ドラマに変わっていくんです。起こる出来事がいろんな方向に振り切れていくので、こちらの感情もいろんなところに連れて行かれてしまう。そのリアルな部分とファンタジーの部分……人間の世界と植物の世界との対比みたいなものがとても面白く描かれているんです。自然の循環が人間の欲望といったものに重ねて描かれていたり、そこの差や比較で考えさせられたりする部分も多いです。

 ワンシチュエーションの中で繰り広げられる人間ドラマと、植物の世界との対比。さらにそこにサスペンス要素も混じり、最終的に物語が向かっていく先は、とても刺激的で、読んでいても引き込まれてしまって、気づいたら心が鷲掴みにされていました。まだまだ物語の深いところまではこれからですが、より理解を深めていけたらと思っています。

――古川さんの役は、庭師の野口と、イングリッシュローズの二役だそうですね。

 まったく違う方向に振り切れている二役なんです。庭師の野口は、寡黙で純粋で実直な男。そして格差社会においては底辺にいる人でもあります。ただ、格差はありながらも彼の抱えている想いにはすごく純粋なものがあるのですが、言ってしまえば子どもみたいな感覚を持っているんです。大人のお面を被った子どもで、それゆえの……みたいな部分があったりします。イングリッシュローズは、周りが“クロマツ”だったり“竜胆”だったりする中での西洋の花なので、そういう役割なのかなと思っています。

――この二役には何か関連性があったりするんでしょうか。

 まだそこはよくわかっていないんですが、たぶん何か意味があると思うんです。これから稽古を進めていく中で、見つかればいいなと思っています。

2022.06.07(火)
文=望月リサ
撮影=深野未季
ヘアメイク=平山直樹(wani)
スタイリング=森田晃嘉