シティポップの海外人気というと、2010年代以降の現象が注目されがちだ。しかし、もとをたどれば、1990年代時点で日本のアニメや音楽は世界中に散らばっていた。その嗜好がインターネットによって加速し共有されたことで、さまざまな国のクリエイターが登場し、グローバル文化現象が醸成されたとも言える。

 

韓国ではレトロ志向ブーム「ニュートロ」の影響も

 忘れてはならないのが、アジア圏の影響力だ。Night Tempoいわく、フューチャーファンクは、LAでヒットしたあと、日本をふくめた東アジアに広まっていったという。

 シティポップ需要の多い東南アジアのインドネシアでは、2020年に現地歌手Rainychが「真夜中のドア~Stay With Me」をカバー歌唱したことで、同曲のグローバル人気をあと押しした。

 韓国では、現地のレトロ志向ブーム「ニュートロ」も相まり、2018年ごろからファッションやアートの分野においてもシティポップ人気が大衆化したと伝えられる(参照: K-POP全盛時代に、韓国で竹内まりやが流行る理由)。その波はK-POPアイドルにも及んでいる。たとえば、紅白歌合戦にも出演したことがある人気グループTWICEの2020年作「SAY SOMETHING」がシティポップ風だと話題を呼んだ。

 そして2022年1月、シティポップの影響力を決定的に示す出来事が起こった。米Billboardチャート史上もっともヒットしたシングル「Blinding Lights」をリリースしたカナダ出身アーティストThe Weekndが、新曲「Out of Time」にて、亜蘭知子の1983年作「Midnight Pretenders」を大胆引用したのだ。世界最大級の歌手による採用は、多くのフォロワーを呼ぶだろう。

 グローバル人気が広まる日本のレトロ文化は、多様な領域で相互に影響することで、さらにユニークな作品を生んでいくはずだ。

2022/1/18 15:20……読者の指摘により以下の記述を修正しました。
4P目「2021年1月」→「2022年1月」

2022.01.28(金)
文=辰巳JUNK