食の都・大阪。味わいたいグルメは数あれど、地元の食通たちが声をそろえて「これぞ大阪のごちそう」と言うのは鯨。中でも鯨の最高峰であるナガス鯨は海のジビエの女王だ。

 そんなナガス鯨の気品ある味わいを伝えて135年、明治18年創業の「鯨料亭 西玉水」をご紹介。


鯨の最高峰・ナガス鯨は海のジビエの女王

◆鯨料亭 西玉水
[日本橋]

 牛肉に最高峰の神戸牛から激レアな水牛まで、様々な品種・等級があるように、鯨も庶民の味とされたミンク鯨やイワシ鯨と、最高級のナガス鯨では、全く別次元の食材。

 大切な来客のもてなしに「河豚か、蟹か、鯨か。でも河豚や蟹はよその街にもある。大阪にしかない最高のごちそう、それは鯨やね」と、粋人ほど重宝するとされ、ナガス鯨こそ、いわば美食最上級者だけが知る、切り札なのだ。

 そんなナガス鯨の気品ある味わいを伝えて135年。明治18年創業の名門が道頓堀川沿いの「鯨料亭 西玉水」。

 歴史を感じさせる重厚なカウンターでは、現在5代目となる主人・乾貴朗さんが浪速っ子らしい快活さで「最近、ますます安定して状態のいいナガスが入るようになりました」と上機嫌。

 ならばなおさら。見逃せぬ鯨の美味しさ。

 ハリハリ鍋でもステーキでも。赤身の鉄分の力強くも澄み切った旨みのアタックの後に、スッと遠浅の浜に波が引くような余韻。

 インパクトはまるでワーグナーの壮大な交響曲のようであり、その余韻はエリック・サティの静かなピアノ曲の世界である。誰が言ったか、鯨は“海のジビエの女王”との言葉にも、深く頷ける。

 ちなみに、鯨料理の中心が大阪になったのは、漁場の和歌山や高知から、仕留めた獲物をすぐ船で曳航できる唯一の大都会だったからだそう。

 そんな何百年もの歴史が磨いた、グルマンの街の隠れた至宝にして女王。知ればきっと、その素晴らしさに胸を張りたくなることだろう。

鯨料亭 西玉水

所在地 大阪市中央区島之内2-17-24
電話番号 06-6211-6847 ※できれば予約を
営業時間 17:00~22:30
定休日 日曜、祝日 
交通 地下鉄日本橋駅から徒歩約8分
https://nishitamamizu.gorp.jp/

※掲載の料金・価格は2021年3月現在のものです。4月以降、変更になる場合もあります。

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大阪のごちそう

写真=福森クニヒロ
構成=矢野詔次郎