バルセロナのピカソ美術館は、この3月に開館50周年を迎えた。ピカソは生まれこそアンダルシア地方のマラガ市だが、青少年時代の約10年を過ごし、画家としての本格的なスタートを切ったのはここバルセロナ。フランス移住後も、この街には終生、強いきずなを感じていたようで、ピカソ美術館も本人のたっての希望で設立されている(ちなみにパリのピカソ美術館は、画家の死後、相続税の代わりにフランス政府が遺族から多数の作品を徴収し、それをもとに設立されたもの)。
展示内容はもちろん、美術館の設計・内装もすべてピカソ自身のチェックを得た上で進められるなど、相当に思い入れのある美術館でありながら、本人はついにここに足を踏み入れることはなかった。彼は当時のスペイン・フランコ独裁政権に断固として反意を表明しており、フランコ存命の間は決してスペインの地を踏まないと公言していたのである。フランコの没年は1975年、ピカソはその2年前、1973年にフランスで亡くなっている。
text:Miyuki Tsubota