蒸し毛蟹の濃厚な味

 ともあれ、これをあと2ヶ月も続けるのはいかがなものかと思いはじめたときに文春マルシェが始まったのだ。天の恵みである。さっそく3万円分注文してみた。3万円にしたのは、夕食を外食にして2000円払うことを考えると、半月分に相当するからだ。とりあえず半月ほど試してみようと思ったのだ。

 天下の文春だからとはいえ食べ物だ。力量を見るためにも、初回は慎重に食品を選ぶことにした。まずは毛蟹だ。一番むずかしい商品かもしれない。ダメならダメが一発で判る。文春マルシェのバイヤーの力量を試すことができる。

 蒸し毛蟹。朝起きたらすぐに冷凍毛蟹を真二つにする。外から見ていたら朝から恐ろしい光景だ。パジャマで出刃包丁を振り回しているのだ。半身は冷凍庫に戻して、半身をドリップがでないように傾けて解凍しておく。1食分2500円になるが、一人でカニ一杯では量が多いのでつまみにならない。半身がちょうどよい。

 蒸し毛蟹は身がぎっしり詰まっていて味が濃厚だ。北海道生まれの私にとってはカニといえば毛蟹であり、ズワイガニではない。懐かしさとともに、こんなに旨い毛蟹は人生初だなと感心することしきり。茹でると蒸すの違いなのだろう。なるほどなあとつくづく思う。

 明石鯛の漁師漬けと自然薯とろろも買ってみた。もちろん、鯛の山かけ丼にするのだ。生わさびをすりおろして丼に乗せる。これが異常に旨い。いろいろやってみて判ったのは、コツは冷蔵庫温度ではなく室温で解凍することだった。

 通販で買ったものをそのまま食べるのは気が引ける。単に組み合わせるだけでも、ひと手間かけた気がして、より美味しく感じることだけは確実だ。もちろんご飯はレンジでチンのレトルトごはんで十分である。

 丼一杯分の自然薯とろろが500円なので、少しお高いように思えるが、外食にくらべたら、居酒屋の突き出し分の金額でしかない。味付けだが塩分も適量で、毎日血圧を測る身の上としてはありがたい限りだ。

 通販グルメは工夫次第だとつくづく思う。組み合わせやひと手間をかけることで、ある種の罪悪感が薄れるし、なによりも美味しくいただける。一食分の金額がはっきりと判るのも面白い。海外ドラマを見ながらの、ながら食いをしながら、今日は1500円の食費だったけど、大満足だったなあと、マニア的な満足も得られるのだ。

 家内は年末までには帰ってくるだろう。その前に明石鯛の漁師漬けを再注文しておこうと思っている。前回はすべて山かけにしてはふはふと食べてしまったのだ。次回は丁寧に出汁をとって、鯛茶漬けで食べてみようと思う。

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2020.12.22(火)
文=成毛 眞