#03:MOTHER[母になる]

 お話を伺ったのは、産婦人科専門医・性科学者の宋 美玄さん。

 多くの女性に支持された「母になる!」。企画誕生から22年、時代はどう変わった?

「キャリアも欲しいし、子育てもしたい、という女性の感覚はスタンダードになり、父親の育児参加への意識もこの10年で劇的に変わったと思います。

 働き方改革の流れもあり、正社員で共働きの恵まれた環境なら、出産や育児はしやすくなったといえるかもしれませんね」(宋さん)

 そういう宋さんが指摘するのは、妊娠や出産の多様化だ。

LGBTや体外受精の未来

「医療の進歩は常に生命倫理との闘いではあるのですが、晩婚化もあり、今20人に1人が体外受精で妊娠、出産しています。

 1980年代の開始当初は“試験管ベビー”といわれ、神への冒瀆!といわれていたことが、もう普通のことになってきましたね」(宋さん)

 ほかにも妊娠にまつわる医療技術の進歩に驚かされる。

「iPS細胞で精子と卵子をつくったり、人工子宮もつくれるので、男性や女性同士でも妊娠、出産できる可能性があります。

 体外受精も、妊娠できる卵子を選別してから胎内に戻し、着床させることができるので、妊娠率が確実に上がっています。アメリカでは受精卵の時点で性別を選別できるところまできています。

 でもこれらはあくまで多様性のひとつ。私は30年後でもやはり、自然妊娠、自然なお産が主流だと思いますよ」

 これから出産をする人に朗報も。

「フランスの女性医師が考案した“ガスケアプローチ”は、姿勢と呼吸を整え、いきまなくても楽に産むことができる出産法。私も2人の子どもをこれで産みましたが、ほんと、息をしてるだけで生まれました(笑)」(宋さん)

●教えてくれたのは……
宋 美玄(そん みひょん)さん

産婦人科専門医・性科学者・丸の内の森レディースクリニック院長。医学博士。女性の性、妊娠などについて女性の立場からの積極的な啓蒙活動を行う。二児の母。雑誌連載や著書多数。
https://www.moricli.jp/

2020.01.31(金)
Edit=Miwako Yuzawa
Text=Yoko Maenaka(BEAM)

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※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

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