コンテンポラリーアートが根付きにくいと言われるローマ。

 人々が保守的だという理由もありますが、ローマにある遺跡や芸術があまりに偉大過ぎて、現代アートの入り込む余地がないのだと思います。

 ですが、そんな状況の中でも新しい試みは多少なりとも行われています。そのひとつが「マクロ・アジーロ(MACRO ASILO)」です。

 地元ローマでは「マクロ(MACRO)」の略称で知られるローマ現代アート美術館(Museo d'Arte Contemporanea Roma)の建物は1971年までイタリアを代表するビール、ペローニ社の工場として機能していましたが、20世紀初頭の優れた工業建築物を保持する目的で工場閉鎖後はローマ市へ引継がれ、美術館として活用されることになりました。

 その後、数年に渡る修改築を経て、2010年、フランス人建築家オディール・デックによって同美術館は現在のモダンでユニークな空間へと生まれ変わりました。

 立派な箱が完成し、企画展も盛んに開催され、当初は人の往来が多かったものの、その後、来館者は減少の一途を辿ることに。

 地元の人々はともかく、バチカン美術館やコロッセオなどの誰もが知る名所が目白押しのローマで旅行客を呼び込むのは至難の業。

文・撮影=村本幸枝(アッティコ)