そして美味しいものも交錯する

 商業港として発展してきたトリエステ。18世紀にはアフリカからヨーロッパへとコーヒー豆を輸入する重要な経路でした。それに加え、オーストリアからカフェ文化が伝わったことで、トリエステはコーヒーの都となりました。

 19世紀ごろから魅力的なカフェが多く存在し、20世紀に入るとドイツの詩人リルケをはじめ、各国の文豪たちが集うようになりました。

 現在も、その当時のまま続く伝統的なお店から、新しいものまで、たくさんのカフェがあります。

 コーヒーの美味しさもさることながら、それらのお供となるお菓子が美味しいのも魅力です。

 オーストリア菓子に影響を受けたトリエステのお菓子たちは、素朴なイタリア菓子に比べて、リッチで洗練されたものが多く見受けられます。

 料理でも、文化同様にオーストリアをはじめとする東ヨーロッパやイタリアなどから、さまざまな美味しいものが伝わってきました。

 東ヨーロッパ伝統の肉煮込み「グラシュ」に北イタリアのニョッキ「クヌーデル」を加えたものは、トリエステの伝統料理としてよく食べられます。

 また、有名なイタリアのハムとして「プロシュート」がありますが、トリエステには「プロシュート・コット・トリエスティーノ」というものがあります。

 ハムをパン生地で包み、オーブンで加熱して作りますので、水分の蒸発が防がれ、一層ジューシーに仕上がります。それをスライスして、西洋ワサビをのせて食べるのがトリエステ流です。

 海に近いことからもちろん海鮮もとても新鮮で美味しく、まさに山の幸、海の幸に恵まれた美味なる町です。

 イタリアでありながら、イタリアにとどまらない、多くの魅力にあふれたトリエステ。比較的治安も良く、落ち着いていますし、新たな旅先の候補としておすすめの町です。

トリエステへの行き方

飛行機/ローマ、ミラノからトリエステ・ロンキ・デイ・レジョナーリ空港まで約55~70分。
鉄道/ミラノから約3時間45分~、ローマから約5時間20分~。

藤原亮子 (ふじはら りょうこ)

イタリア・フィレンツェ在住フォトグラファー&ライター。東京でカメラマンとして活動後、'09年、イタリアの明るい太陽(と、おいしい食べ物)に魅せられて渡伊。現在、取材・撮影・執筆活動をしつつ、イタリアの伸びやかな景色をテーマに写真作品も制作中。イタリアでの日々をつづったフェイスブックはこちら。 https://www.facebook.com/chococogogo

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文・撮影=藤原亮子