女は、絶景のような美しさを持たなければいけない。見る人が立ち尽くし、言葉を失う、そういう美しさでありたいのだ。カナダは、そうした美に出くわす国。
愛くるしい妖精美を育んだのは
まさに風光明媚の偉大!
意外にも、ここは“美人大国”である。今や、美人の産地といえば、もっぱら北欧にバルト三国の名が挙がるが、北寄りの美人はどちらかというと彫刻的で近寄りがたい妖精美を誇るのに対し、ここカナダでは丸みを持った愛くるしい妖精をよく見かけることになるだろう。まさに、水が変われば、美人も変わる。濁りを許さぬ凍てつく水と、穏やかにたゆたう豊潤な水の違いが、女性美の系統までを分けるのは、何かお伽話の昔にまで遡るようでロマンチック。まろやかなカナダ美人は風光明媚なこの土地が育んだものと思えてならないのだ。“癒やし系”という言葉は安易に使いたくはないけれど、でも人の美しさが見る人の心を癒やすのは、この国の壮麗な景色と同じなのである。
ちなみに昔から大好きな女優に、映画『きみに読む物語』でブレイクしたレイチェル・マクアダムスがいるが、この人がカナダ出身であることを知って、深く納得した。その笑顔は人を包み込む、温かい力を宿している。ハリウッド女優では珍しい、なんとも穏やかな波動を放つ人だ。
今回、編集部が出会った女性たちにも、愛らしさのなかに包容力を感じた。こちらまで優しい気持ちになれるほど、素晴らしい笑顔を彼女たちは持っている。絹のおくるみに包まれて育った赤ちゃんは、絹の如き美しい肌を持つ女性に成長すると言われるけれど、絶景に抱かれ、目にしてきたことで、自らも景色のような力を宿しても、少しも不思議ではない。以前から“女は、景色のような美しさを持たなければいけない”と訴えてきた。見る人が、立ち尽くし、言葉を失い、もっと眺めていたいと思うのが絶景であるならば、同じような力を宿すべきが女性の美しさであると思うから。見る人を威圧したり、嫉妬させたりする美貌もあるならば、その対極にいるのがカナダ美人……。
実は今、美容界でも大きな話題になっているのが飲むインナーケア、フラワーエッセンス。ホメオパシーを下地にした古代からある立派な療法だ。花びらに溜まった朝露を摂取し、花が持つ波動で、ネガティブな感情に働きかけて心を前向きにするもの。数滴を直接口に含むのが特徴で、怒りや恐れ、嫉妬、悲哀、不安などに対し、すべて異なる種類の花が効果を発揮するのは極めて神秘的。それぞれの波動が人の魂の深い部分に働きかけるという。自然はなんと偉大か。膨大な花の種類も全て意味のあるものと思い知らされるから。
これは赤ちゃんの気持ちを安定させたり、ペットを癒やしたりするのにも使われる。おそらく長い地球の歴史のなかではあらゆる生命が、花々の波動を受けて命を洗い、ときには命を長らえてきたのかもしれないと思うとちょっと感動すら覚えてしまう。
そのフラワーエッセンスのトップブランド、DTWがカナダ生まれ。植物の生命力ひいては波動の力が格別だからだろう。ベースとなる水はもちろんロッキー山脈が育む湧き水。カナダには植物療法としての処方を学ぶ学校まである。
こうしたオーガニックの象徴ともいえる美容アイテムが育まれた一方で、意外にもトレンドメイクを最速で提唱する世界的なブランド、M・A・Cも実はカナダ生まれ。大自然の恵みと、エッジの利いたデザイン表現という対極にあるものを見事に融合しているのがカナダなのだ。本当に懐の深い、想像を絶するほど豊かな魅惑の国である。
トリニティフォース
電話番号 03-5789-8773
M・A・C
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齋藤 薫(さいとう かおる)
美容ジャーナリスト、エッセイスト。女性誌で数多くの連載を持ち、化粧品の解説から開発、女性の生き方にまで及ぶあらゆる美を追求。エッセイに込められた指摘は的確で絶大なる定評がある。この連載では第1特集で取材した国の美について鋭い視点で語る。各国の美意識がいかに形成されたのか、旅する際のもうひとつの楽しみとして探っていく。
Column
齋藤薫さんは、女性誌で数多くの連載を持ち、化粧品の解説から開発、女性に生き方に及ぶあらゆる美を追求している。この連載では、CREA Travellerが特集において取材した国の美について鋭い視点で語っていく。
Text=Kaoru Saito
Photo=Atsushi Hashimoto, Takashi Shimizu, Hirofumi Kamaya(still)