多様な「抵抗」の姿勢が
印象的な女たちの肖像
さて、では今回、現在をリードする10人の英国人女性に選ばれた「抵抗する女たち」のポートレートのいくつかを、ご紹介しましょう。
パネル・ディスカッションのなかで、「今回、ご紹介しているポートレートは、『成功した女性たち』という基準ではなく、『英国社会にインパクトを与えた女性たち』という基準で選ばれたものです」とキュレーターのロージー・ブロードリーさんが話していたとおり、選ばれたポートレートのなかには、それほど一般に知られていない名前も含まれています。
例えば、女性初のロンドン主教サラ・マラリーさんが選んだのは、ヴィクトリア時代の英国で活躍した、ジャマイカ出身の看護師メアリー・シーコールのポートレート。
クリミア戦争に従軍するのではなく、私費を費やして個人的に前線に赴き、薬草の知識をフル活用し、敵味方、人種を問わず負傷者を助けたことで、当時の人々からは多くの賞賛を受けました。黒人女性がポートレートになるのが大変珍しかった19世紀の英国で、彼女がどれだけ尊敬されていたかがしのばれます。
しかし、死後はすっかり人々から忘れられ、この肖像画もカーブーツセールに出されていたところを、識者に見いだされたという後日談付き。この絵を選んだマラリーさんは同じ看護師として、新米時代、シーコールから多大なインスピレーションを受けたのだそうです。
ユニバーサル・ミュージック・グループのデッカ・レコードの女性社長レベッカ・アランさんが選んだのは、逆に知らない人はいないエリザベス1世の肖像画。父が母を殺し、さらにその父からも捨てられたという幼少期を経て、25歳で即位、混乱に直面していたイングランドを苦労しながらも力強く牽引したということで選んだ一枚だそうです。
コメディアン兼作家のミランダ・ハートさんは、女性が自分の創作で我を通すのが非常に難しかった時代に決して妥協をしなかった、という理由から、ベアトリクス・ポターのポートレートをチョイス。
ほかにも通常はギャラリーに展示されていない作品のなかから、今回の会期中に限って公開されているものもあるので、要チェックです。
Rebel Woman
(抵抗する女たち)
会場 National Portrait Gallery
所在地 St Martin’s Place, London WC2H 0HE
会期 2018年12月31日(月)まで
https://www.npg.org.uk/whatson/rebel-women/
文=安田和代(KRess Europe)