近年では贈答品としても人気の月餅

 さて、気になる市内5つ星ホテルの2012年度版ラインナップだが、「タロ芋&ゆず」、「チョコレートオレオ」、「クランベリー」、「プラム」、「ハスの実とシャンパントリュフ」など、「それって月餅?」な味がズラリ。通常、中秋節の約1カ月前から売り出され、値段は4個セットで約70万~150万ドン。セットで30万ドン程度の一般的な月餅と比べるとかなり高額だが、それでも飛ぶように売れているという。

シェラトン・サイゴンの月餅。高級感が漂う。(写真:ホテル提供)

 ベトナムでは元来、月餅は家庭で食べられたり、先祖への供え物にされたりするものだった。しかし近年では日本のお中元のように、中秋節に合わせ親しい人やふだんお世話になっている人への贈答品とすることが多い。そのため有名ホテルの月餅は、一種のステータスとして、特別な人への贈り物としても重宝されるというわけだ。

中秋節の頃になると街中にこのような月餅の仮設販売所が立つ

 中秋節が近付くと、たくさんの月餅をズラリと並べた仮設販売所が街のあちらこちらに出現。月餅入りの紙袋をさげて得意先へ挨拶に回るビジネスマンの姿も数多く見られる。季節感を感じにくい南国でのほど良い風物詩ともいえるこの月餅。中秋節間近のこの時期、ベトナムを訪れた際はぜひお試しあれ。

左:販売所で月餅を売る女性。約1カ月の間に数千箱も売れるとか
右:贈答の際には、詰め合わせのボックスにいれて

杉田憲昭(すぎたのりあき)
ベトナム初の日本語フリーペーパー「Vietnam Sketch」、ベトナム航空機内誌「Heritage Japan」ほか、隔週刊生活情報誌「at saigon」などを手掛ける編集プロダクション「オリザベトナム」所属。在ベトナム9年。ホーチミン市を拠点に、取材・執筆・撮影・コーディネートまで、ベトナムに関することならなんでもお任せ。

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text&photographs:Noriaki Sugita