街なかを散歩しながら“無料カラバッジョ”を鑑賞。そんな贅沢を味わえるのはローマだからこそ。

 光と影を強調した画法で知られるバロック絵画の巨匠、39歳の若さでその生涯を終えたミラノ出身のカラバッジョ(1571年~1610年)は1592年から1606年までの14年間をローマで過ごしたが、その間に描いた作品がローマ市内にある教会のいくつかに飾られている。いずれの教会も旅行客なら誰もが通過するエリアに点在しているので、街歩きの合間に立ち寄ってはいかがだろう。

 まずはロマーノたちがこよなく愛するナボーナ広場・パンテオン地区にあるサンタゴスティーノ教会。

中央にカラバッジョの作品『Madonna di Loreto (ロレートの聖母)』260cm×150cm 1604~1605年

 内部左手にある礼拝堂には1604年-1605年の作品『ロレートの聖母』が展示されている。

 聖母のモデルとなったのは、カラバッジョの近所に住む若い娘だったと言われているが、当時、このモデルをめぐっての小競り合いが生じ、カラバッジョは相手の男を傷つけたために、数日の間、身を隠す羽目になったと伝えられている。血の気が多かったことで有名なカラバッジョのエピソードのひとつである。

サン・ルイージ・デイ・フランチェージ教会 (San Luigi dei Francesi)内観

 そこから歩いて数分の場所にあるのがナボーナ広場とパンテオンの中間に位置するサン・ルイージ・デイ・フランチェージ教会だ。

 ここでは『聖マタイの召命(1599年-1600年)』、『聖マタイの殉教(1599年-1600年)』、『聖マタイと天使(1602年)』の三作品を鑑賞することができる。

サン・ルイージ・デイ・フランチェージ教会 (San Luigi dei Francesi)内にあるカラバッジョの三作品

 ちなみに、現在、観られる『聖マタイの殉教』はカラバッジョの手によって上描きされたもので、当初の構図ではキャンバスの左側奥にカラバッジョ本人と思われる人物が描かれていたらしい。後世、作品がX線にかけられたことでその事実が判明している。

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text&photographs:Yukie Muramoto