進化を続ける北部のバッチャン焼
南部の陶器がソンベー焼なら、北部の顔とも言える陶器が「バッチャン焼」です。ベトナムの首都、ハノイにあるバッチャン村では古くから陶器の生産が盛んで、交易品として海外にも数多く輸出されてきました。そのため、村には数多くの窯や陶器店が軒を連ね、バッチャン焼は今やベトナムを代表する陶器として人気を集めています。
バッチャン焼は皿や椀、湯吞みや急須など、ソンベー焼以上にさまざまな商品が作られています。とくにお土産物店などで見かける、朱や藍色の絵具で描かれたトンボや菊の絵柄のものは伝統的なスタイルで、素朴な風合いを持ちながら、どことなく気品ある面持ちが特徴です。
日本のベトナム料理レストランなどでもよく使われており、一度は目にしたことのある人も多いのではないでしょうか。
また、同じバッチャン村の陶器でも、最近は従来のバッチャン焼より薄くて軽い商品が登場してきています。
こちらは現地では「ニューバッチャン」と呼ばれ、華やかな色合い、従来の枠にとらわれない自由な絵柄、そしてすっきりとしたモダンなデザインと、現代の家庭でも普段使いしやすい、洋食器のような雰囲気を合わせ持っています。
バッチャン焼は、ハノイなら陶器店のほか、旧市街のはずれにあるハンザ市場の地下などで、ホーチミン市ではベンタイン市場などで購入できます。
バッチャン焼もソンベー焼も、どちらも比較的リーズナブルな価格となっていますので、種類や形、デザインなどが豊富にそろうベトナムの食器で、ぜひ自宅の食卓を彩ってみてください。
杉田憲昭(すぎたのりあき)
ベトナム・ホーチミン市在住のエディター&フォトグラファー。編集プロダクション・広告代理店「GRAFICA」代表。日本で編集者として活躍後、渡越。在ベトナム14年。女性誌や旅行誌、機内誌などの取材・撮影・コーディネートを通じ、幅広くベトナム情報を発信中。
文・撮影=杉田憲昭