モンテネグロの情景として描かれていた景色

 映画『007』シリーズといえば世界中の誰もが知る人気シリーズですね。実は2006年に公開された『007 カジノ・ロワイヤル』では、ジェームズ・ボンド役のダニエル・クレイグがチェコを訪れ、各地で撮影されたことはご存じですか? 舞台設定の関係上、そこがまったく別の国であると思っている人も多いかと思います。

12世紀からこの地に立ち続ける要塞、ロケット城。

 撮影地は何カ所かありますが、そのなかでも西ボヘミア地方のオフジェ川のほとりにひっそりとたたずむロケット城は、観光地としての知名度は低いですが、007ファンならぜひ訪れたいスポットのひとつです。

 ちなみに映画のなかではチェコではなく、モンテネグロの情景として設定されています。ロケットとはチェコ語で「肘」の意味。町の周りをオフジェ川が肘のように湾曲して流れ、その地形が町の名前の由来だそうです。

町の地図。まるで肘のように川は湾曲して流れています。

 この町は中世当時、国を守る要衝の町として発展し、ロケット城も要塞として建設されたといわれています。しかし長い時代の移り変わりのなかで度重なる攻撃や火事に見舞われ、19世紀の初頭には国の牢獄として使用されていたこともありました。牢獄だった時代はこの城内で多くの拷問も行われたそうで、現在でも城の地下には多くの独房が残され、一般公開もされています。

城の内部には、15世紀からの貴重な壁画も残されています。

 町には広場があり、昔ながらのノスタルジックな家並みが残されています。映画のなかでもロケットの町並みが登場し、ジェームズ・ボンドの会話シーンもここで撮影されました。

ロケットの町の中心にある広場。

 静かな町を散歩していると、映画のセットのなかにいるかのような気分。この町が撮影地として選ばれたのも、この美しさが理由なのでしょう。ノスタルジックな気分に浸りながら、町歩きを楽しんでみましょう。

Hrad Loket(ロケット城)
所在地 Zámecká 67,357 33 Loket
電話番号 352-684-648
URL http://www.hradloket.cz/

文・撮影=クレメントゆみ子