戦後のロンドンにタイムスリップ!
レトロな地下鉄バーで秘密のカクテルを味わう

 第二次大戦中、防空壕として使われたロンドンの地下鉄駅。英国人たちは、自宅にある装飾品や家具を持ち込んで「家の外にある家」の空間を作り上げ、酒とダンスで空襲中の暗い夜をのりきった。戦後も、このスピリットを保とうとする人々が、密かに廃駅に入り込み、夜な夜なパーティーを開催。それが「Cahoots」として人々に知られるところとなった……。

左:開店前のCahoots。ここがバーとはちょっと分かりづらい入り口です。
右:開店と同時に、昔の駅員風の衣装を身につけたスタッフがドアを開けてくれます。

 そんなまことしやかなストーリーをうたい文句に、夜ごとロンドナーの酒宴の舞台となっているのが、SOHOのバー「Cahoots」です。コンセプトは地下鉄の廃駅、そして戦後のロンドン、ということで、徹底されたインテリアと演出がなされています。

タイル張りのバーは、まさに地下鉄駅を改装したかのような趣です。(C)Cahoots

 いかにも秘密クラブの雰囲気たっぷりの鉄のドアを抜けると、戦後の地下鉄駅を思わせる木のエスカレーター風の階段で地下へ。チケット売り場を通って、扉を開けると、地下鉄のプラットフォームのようなタイル張りの壁にコンクリートの床。おなじみ「MIND THE GAP」の黄色い表示まであるという徹底ぶりです。

ドアを開けてなかに入ると、チケット売り場に向かう木のエスカレーター風の階段が。(C)Cahoots

 プラットフォームの向こう側には、なんと車両まで用意されていて、なかに入ると地下鉄のシートで見慣れたファブリックがほどこされた椅子と、トランクや木箱のテーブルが置かれています。頭上には20年前まではまだ現役だった、黒い球状のつり革や、ベイカールー・ラインの路線図も掲げられています。

地下鉄の車両への入口。(C)Cahoots
コレクターから譲り受けたという本物のシートやつり革を設えた車両内は、まさに地下鉄そのものです。(C)Cahoots

文・撮影=安田和代(KRess Europe)