友人は、数日前に家の前でハクビシンを見かけたそう

朝の散歩では、満開のしだれ桜をひとり占め。

 そして私が滞在している間に「越前陶芸村しだれ桜まつり」が開催されました。陶器や木工、アクセサリーなどのクラフト100店、フード30店が並び、鯖江消防音楽隊の演奏や地元の高校書道部のパフォーマンスなど多くのイベントもあり、2日間とても賑わっていました。

 この前日に夫は東京に戻ってしまったので、地元・越前町で頑張っている「田んぼの天使」のおにぎりや、「小百姓かさつじ」のマコモプリンを購入して、ひとりで芝生に座って満開のしだれ桜を眺めながらのブランチを楽しみました。人が多くても、広場はとても広いので、子供連れの方もお年寄りも若いグループもみんなのんびりと好きな場所でくつろぎ楽しめるのです。

日本の古典をよむシリーズ『平家物語』松尾たいこ・絵(小学館)から。

 こうして福井での今年の制作の日々がスタートしました。

 朝は、ウグイスの「ホーホケキョ」という鳴き声で目が覚めます。散歩に行くと、まだ田植え前の田んぼには白鷺がスックと立っています。

 その日の制作を終えて温泉への道を歩いていると何かが横切り、振り返るとキジでした。

 地元の友人は、数日前に家の前でハクビシンを見かけたそう。もうすぐアカショウビンも渡来すると聞きました。次回、5月の滞在で会えるかな。

 久しぶりに、東京とはまったく違う自然の中にいると、あらためていいところだなあ、美しいなあ、好きだなあと思いました。

 三拠点生活をしていると、いつまでも景色や日常が「当たり前」にならず、新鮮な気持ちでそれぞれの場所のいいところを感じていられる気がします。

松尾たいこ(まつお・たいこ)
アーティスト/イラストレーター。広島県呉市生まれ。1995年、11年間勤めた地元の自動車会社を辞め32歳で上京。セツ・モードセミナーに入学、1998年からイラストレーターに転身。これまで300冊近い本の表紙イラストを担当。著作に、江國香織との共著『ふりむく』、角田光代との共著『Presents』『なくしたものたちの国』など。2013年には初エッセイ『東京おとな日和』を出し、ファッションやインテリア、そのライフスタイル全般にファンが広がる。2014年からは福井にて「千年陶画」プロジェクトスタート。現在、東京・軽井沢・福井の三拠点生活中。夫はジャーナリストの佐々木俊尚。公式サイト http://taikomatsuo.jimdo.com/

Column

松尾たいこの三拠点ミニマルライフ

一カ月に三都市を移動、旅するように暮らすイラストレーターの松尾たいこさんがマルチハビテーション(多拠点生活)の楽しみをつづります。

2016.04.16(土)
文・撮影=松尾たいこ