文学的な要素のある菓銘の数々

テイクアウトした2015年10月16日(金)~10月31日(土)販売の生菓子「山路の錦」486円。

 「山路の錦」は、紅色、黄色、緑色の3色の羊羹で紅葉の葉をかたどったもので、紅葉の鮮やかさを錦にたとえた菓銘には文学的な要素もあり、優雅な気持ちになります。

2015年10月16日(金)~10月31日(土)販売の生菓子「秋の彩」 486円。

 「秋の彩」は、野山の木々が色づく様子を紅と黄色で表したきんとんで、小倉餡入り。

 「竜田の里」は、紅葉の名所である竜田川(奈良県)の情景をテーマに、紅葉と水紋を描いたじょうよ饅頭です。日常生活の中では、秋だからといって竜田川を連想する機会はなかなかありませんが、「竜田の里」を見れば、百人一首の在原業平の和歌を思い出したくなります。

──「ちはやぶる神代も聞かず竜田川 からくれなゐに水くくるとは」

 竜田川に紅葉が散り、川面を紅色に染める情景を思い浮かべれば、すぐにでも旅に出かけたい気分。その他の生菓子も、銘まで味わい深いものが多く、メニューを眺めるだけで花鳥風月の世界へと誘われます。

「栗蒸羊羹」 584円(飲物付き1,232円~)。2015年の菓寮での生菓子の提供期間は10月31日(土)までですが、ショップでは棹物の「栗蒸羊羹」を11月中旬まで販売中(ハーフサイズ 2,376円)。

 そんななかで異色の存在感を放つのが、「栗蒸羊羹」。こちらは文学性より何より、旬の栗の存在が主役の蒸羊羹です。餡に小麦粉と葛を加えて蒸し上げた生地はムチッとした弾力があり、新栗のホクッとした食感と見事な相性。栗蒸羊羹と共にお抹茶をいただけば、しみじみと秋を実感できます。

最中「御代の春」 1個195円。桜をかたどった「紅」は白餡、梅をかたどった「白」はこし餡入り。

 さてさて、食後は、最中「御代の春」を購入するため、隣のショップへ。桜や梅をかたどった形も愛らしい最中は、白餡・こし餡ともに、さらりとした餡の口どけが絶妙。毎回どちらから食べようかと悩みつつ、結局両方食べてしまいます。

虎屋菓療 東京ミッドタウン店
所在地 東京都港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウン ガレリア B1
電話番号 03-5413-3541
営業時間 11:00~21:00
定休日 無休(元日のみ)

小松めぐみ (こまつ めぐみ)
東京都生まれ。食い道楽の親の影響で、10代半ばにして料理に目覚める。大学卒業後、出版社勤務を経てフリーランスに。2000年に独立し、主に雑誌で飲食関連の記事を編集している。

Column

小松めぐみの和菓子で和む、ほっこり時間

落ち着いた和の空間で和菓子をいただき、ほっこり和む、幸せな時間。仕事の合間や散歩の途中に、自分の時間を取り戻せる甘味屋さんをご紹介します。

2015.10.28(水)
文・撮影=小松めぐみ