標高1600メートルのサパは一年を通して涼しい避暑地

 ベトナムの民族衣装といえばアオザイですが、実はこれ、ベトナムの主要民族のひとつであるキン族の衣装だというのは、あまり知られていないのではないでしょうか。

美しい山並みが広がるサパ近郊。
サパの街の顔とも言える教会。

 ベトナムにはキン族を含め54もの民族が暮らしており、それぞれに独自の民族衣装をもっています。近年ではジーンズやTシャツなど、現代風の洋服が普段着となっていますが、ベトナム全土に散らばる少数民族のなかには今も、伝統の衣装を身にまとい、日々の生活をしている人々がいます。そして、そんな彼らとの出会いもまた、ベトナムの旅の醍醐味といえます。

鮮やかな衣装をまとう花モン族の女性。

 ベトナムの首都・ハノイから北西へ約250キロの山間の町サパ。標高約1600メートルの高原にあり、一年を通して涼しい(冬はむしろ日本並みに寒い)、北部有数の避暑地となっています。

左:黒モン族の家族。
右:市場で井戸端会議に花を咲かせる赤モン族の人々。

 そんなサパには、周辺の山に住むたくさんの少数民族の人々が、毎日行商にやってきます。麻を編んだ半纏風の藍染めの衣装に脚絆を巻いた黒モン族や、座布団状の真っ赤な布を頭にかぶった赤モン族、緻密でカラフルな刺繍があざやかな花モン族など、ハノイやホーチミン市ではまずお目にかかれない彼らの姿を見るだけでも、はるばる山あいまでやってきて良かったと思わせてくれます。

文・撮影=杉田憲昭