地中海リゾートからちょっと足を伸ばして

クニドス遺跡、入り口を入ってすぐのあたり

 トルコの地中海沿岸には、フェティエ、カシュ、カルカンなど、魅力的なリゾート地が点在し、ヨーロッパからの観光客に人気です。この観光ブームに乗って、新たなホテルや道路が次々と建設されるなか、いまだ素朴なたたずまいを見せるダッチャ半島。その半島の西の端っこに紀元前9世紀にギリシャ人によってつくられた都市クニドスの遺跡があります。ギリシャ人の植民都市として築かれたクニドスは、当時、ロードス島のリンドスやカメイロスなどと並んで、ドーリア人によるヘクサポリス(六大都市)を形成していたといわれています。

クニドス遺跡、アゴラ跡地。向こう側に見える海は地中海

 またクニドスは、古代ギリシャの彫刻家プラクシテレスによる、史上初の等身大の女性裸像、アフロディーテ像が置かれた場所でもあります。古代ローマの地理学者ストラボンをもって「もっとも美しい女神アフロディーテのために、もっとも美しい半島に建てられた都市」といわしめた所以でもあります。

 エフェス遺跡のように、きちんと整備されているわけではありませんが、海から丘に向かってトレッキング気分で遺跡のなかを散歩するにはぴったりです。チケットを買うときに手渡される地図を見ながら、神殿や劇場の間を縫って坂道を上って振り返ると、細い陸地をはさんで右手にエーゲ海、左手に地中海の港が見渡せます。遺跡のなかでは、市民の広場として使われていたアゴラの石柱や、オデオン(音楽堂)にかなり完全に近い部分が残っていて、当時の繁栄をしのばせます。

Kazuyo Yasuda