甘い香りに包まれたレストラン&ベーカリー
ここ数年、イスタンブールのシェフ業界ではとりわけ女性の活躍が目覚ましいが、そのなかでもとくに評価が高いのが、「ロカンタ・マヤ(Lokanta Maya)」のディデム・シェノルだ。ニューヨークのFCI(フレンチ・キュリナリー・インスティテュート)で学んだエリートシェフの彼女が、マヤで大成功を収めたのちにオープンしたのが、メシュルティエット通りにあるこぢんまりとしたベーカリー&レストラン「グラム(Gram)」。
当初はオープンキッチンを備えた事務所をつくる予定で借りた場所だったというこのお店、確かに入口はとても小さい。店名もあまり大きく書かれていないので、注意しないとうっかり通り過ぎてしまいそう。
それでも、入口から入った途端、目の前に並ぶブラウニーやケーキと、あたりに満ちる甘い匂いは瞬時に人を幸せにする。ディデムはブログのなかで「一歩入った途端、クッキーやシナモン、ヴァニラの香りに満ちたお店とかあるでしょう。ああいうのが大好き。それで、朝まだ暗いうちから下準備を始めて、コーヒーのいい匂いがするなかで焼きたてのブリオッシュにマーマレードを乗せて食べられるような……そんな夢を叶えるために、グラムをオープンしたのよ」と書いている。
そんな彼女が夢に見ていたお店は、確実に実現されている。オシャレで予約なしでは入れないマヤとは異なり、グラムは暖かい雰囲気に包まれたアットホームなお店だ。マヤ同様、季節の食材を産地から、というモットーは健在なのでメニューは日ごとに変わる(ただしブラウニーは定番の人気メニューだ)。
文・撮影=安尾亜紀