「犬と暮らす」とはどういうことか? 反省しては学び、愛情に変えていく――井上裕介とチョコの9カ月

 お笑い芸人さんに一緒に暮らすペットを紹介してもらう連載「お笑い芸人の“うちの子”紹介」。第21回はNON STYLEの井上裕介さん。

 今年9月に結婚したばかりの井上さんは、保護犬でチワワとプードルのミックス・チョコくん(オス・11カ月)と暮らしています。

 奥さんの一目惚れから家へやってきたチョコくん。井上さんにとって初めての犬との生活は最初、さまざまな苦労もあったそうですが、今は何よりチョコくんを優先させる生活へ。

 「えらいもんで、生活がまったく変わりました」と愛おしそうに目を細めながら話してくれました。

ペットや子供に声色を変える…「そこまで媚びなあかんのか?」と思っていた過去

――保護犬だったチョコくんと暮らし始めたきっかけを教えてください。

 結婚する前から、奥さんがずっとワンちゃんを飼いたいと言っていたんです。僕も飼ってみたい気持ちはあったんですけど経験がないし、ペットロスも怖くて。それに子供の頃、噛まれたトラウマもあって踏ん切りがつかなかったんです。

 あと、2016年やったかな? フジテレビの番組でペットを飼ったことがない芸人が2週間だけ一緒に暮らす企画で、ダックスフントのレンっていう子を預かったことはありまして。

――その番組で飼うかどうかの決断を迫られた井上さんは泣きながら飼わない選択をされたんですよね。理由は、命には責任があるから中途半端な気持ちでは預かれないとのことでした。

 当時の僕に、あの子の命を預かることはできませんでした。けど、一緒に暮らしてみて、それまで(犬に)持っていた印象は変わりました。最初は甘噛みされることさえ怖かったんですけど、レンが噛むことはなかったし、甘噛みされたとしても全然痛くはなかった。家に帰ると玄関で待ってたり、家の中をついて回ったりする姿を見てかわいいなぁ、愛おしいなと思うようになってたんです。

 だから、さっきも話したように飼ってみたい気持ちはありながら踏ん切りがつかなかったところに、奥さんが「この子(チョコ)を飼うことに決めました」って言ってきたので、「いいよ」って返したんです。

――おうちへ初めてやってきた日の様子はいかがでしたか。

 これ、よくなかったなと反省していることなんですけど、本来ならどういう大きさのケージにするかとかちゃんと決めてから迎え入れるべきところを、飼うことを早々に決めてしまった分、最低限のものしか準備できてなかったんですよ。最初、チョコには段ボールでできた仮設の犬小屋で過ごしてもらうことになってしまって、本当に申し訳ないことをしました。そこから、おもちゃとかケージとかひとつずつ、必要なものを買い足していきましたけどね。

――チョコくんと初めて対面したとき、どんなことを感じましたか?

 この世にこんなにかわいい生き物がいるんだなって。人懐っこくて、最初からすぐお腹を見せて甘えてきて……。今まで見てきたワンちゃんもすべてかわいかったんですけど、これから家族になるんだなと思うといっそうかわいく見えましたね。けど、すぐ犬と暮らすことの大変さも実感しました。

――例えば、どんなことですか?

 しつけの部分でいうと、トイレの場所。なかなか覚えられなかったですね。あとは噛み癖。歯の生え替わりでかゆいのか、その辺にあるものを噛むんですけど、最初は叱り方がわからなくて。で、吉本の後輩に高校時代、犬のトレーナーについて学ぶ学校に通って全国大会までいったヤツがいて、以前から知り合いだったんで、その子に根本的なところからいろいろと教えてもらったんです。

 (以前まで)相方の石田(明)が子供に対して、僕の奥さんがチョコに対して、赤ちゃん言葉みたいなんを使ってるのを聞いて、“声色や喋り方まで変えて……そこまで媚びなあかんのか?”とか、うがった見方をしてたところがあったんですよ。ほんまに僕の悪いところなんですけどね。でも、その後輩に「褒めるときと叱るときはメリハリをつけないと、ワンちゃんが覚えてくれないですよ」って言われて、あぁ、あれってこういうことやったんかと納得したんです。やから、チョコがちゃんとトイレができたときは、僕も「おぉ! よしよしよしぃ〜!」って褒めるようにしました(笑)。

2022.11.29(火)
文=高本亜紀
撮影=佐藤 亘
写真=井上裕介