その土地にあるもの、その地に生きるものを大切にする物作りの奥深さは、海という境界線を持つ離島でこそ、より鮮明になるかもしれない。

 奄美大島には、島の自然を守り、生かす、未来に繋がる物作りが息づいている。

 そんな、自然を慈しみ、伝統の先を見つめる奄美大島の作り手が営むショップ4軒をご紹介。


機織り技術を未来へ繫げる奄美布という新発想

◆はじめ商事
[名瀬有屋町]

 1970年代には島の就労人口の5分の1が携わっていたという本場大島紬。

 「今の生産量は最盛期の約1%。高い技術をもつ機織り職人は高齢で、後継者も少ない」と自身も締めの伝統工芸師であり、大島紬の製造卸業を継ぐ元 允謙さんは言う。

 芸術工学を学び、京都の呉服問屋に勤め、着物離れの現状を知る元さんは、同じ材料と道具で別の物を作ることに思い至る。

 それが「奄美布」だ。古い着物を細く裁断したものを緯糸に織る。経糸の素材により風合いは自由自在。織り上がる生地の使い道は無限大だ。

 あらゆる素材に応用可能な同製法に刺激を受けるブランドも現れている。職人を生かし、未来へ紡ぐ新発想である。

はじめ商事

所在地 鹿児島県奄美市名瀬有屋町30-1
電話番号 0997-52-1741
営業時間 10:00~18:00
定休日 不定休
https://hajimeshoji.com/

Text=Chiyo Sagae
Photographs=Atsushi Hashimoto