気象予報もある種の「報道」だ

 公式ガイド『おかえりモネ Part1』の中で、チーフ演出の一木正恵氏、そして制作統括の須崎岳氏がともに一致して語る言葉がある。それは『おかえりモネ』が「今」を描く作品だということである。

 この物語は2011年、東北震災から始まり、半年間で2021年の現在に追いつくように物語が進む。「今」というのは、単に時間や時代だけの話ではない。「2011年3月から10年、マスクが必須となって1年、私たちは主人公・モネと同じように、10年前のあの日『何もできなかった』と思い、いまだその答えを探し続けている。そしてエンターテインメントを生業とする理由を問い続けている」とチーフ演出の一木正恵氏はムックの中で語る。

『おかえりモネ』の中で主人公が働くことになるテレビ局は、朝の連続テレビ小説を制作するスタッフたちの「今ここ」、NHKとも重なる。ドラマの中で繰り返し描かれるのは、気象予報もまたある種の「報道」であるということだ。

 

 ニュース番組の中で報じられることのほとんどは過去に起きた事件、あるいは今まさに起きていることの中継だ。だが、天気予報だけは「これから起きることの報道」であり、未来についてのニュースなのである。

人を助ける仕事は、人を殺す仕事にも変わりうる

 第12週『あなたのおかげで』の中で、主人公たちは観測史上初めてとなる、東北に直接上陸する台風の接近を予測し、警告を出す。そこで主人公百音は「復興に向けてようやく歩き始めた地元経済か、それとも人命の安全か」という、2021年の世界がコロナ禍で直面している「ハンマーか、それともダンスか」のジレンマに通じる選択を迫られることになる。

 それは決して「こちらが100%正しい選択肢で、あちらは心の汚れた者が選んで天罰を受ける選択肢」と御伽噺の教訓のように割り切れる選択肢ではないのだ。

 登場人物たちはみな、過去に深い傷を抱えている。浅野忠信が演じる新次をはじめとする被災地の人々は言うまでもなく、東京編に登場する気象キャスターの朝岡は大学の駅伝選手時代に天候を見誤りレースを潰してしまった過去を持ち、医師の菅波もまたトラウマを抱え、「あなたのおかげでという言葉は麻薬だ」と主人公に警告する。そうした心の傷、世界の複雑さの前に敗れた過去の教訓が、この作品の構造を深いものにしている。

2021.08.15(日)
文=CDB