「怖いもの知らずだった10歳の頃に戻りたい(笑)」

――すでに来春スタートのNHK連続テレビ小説への出演も発表されています。多忙な中で、大学にも通っているんですよね?

 はい。大学には絶対に行きたいと思っていました。自分が携わっているものをちゃんと知らなければいけないと思って、美術や演劇、映画について学んでいます。自分では絶対に選ばない映画を観る機会を与えてもらえるので、入学してよかったなと毎日思ってます。

――たくさんの期待を受けながら新しい仕事に挑む時に、勇気を出す方法は?

 自分に期待をせず、「楽しむぞ」という気持ちを大事にすることだと思います。現場では、失敗もしながら、後悔が残らないようにやりきります。作品が終わった時に、初めて自信をもらえるタイプです。

――クラインクインの前の日はどんな感じですか?

 ほとんど眠れないです。震えてます。年々責任を感じることが多くなってきたので。それは悪いことではないと思っているんですけど、怖いもの知らずだった10歳の頃に戻りたいです(笑)。タフで、何も知らない強さがあったので。

――10歳でこの世界に入って10年が経ったのに、いい意味で「慣れない」んですね。だから飽きない。

 全然飽きないです! どんどん難しくなるし、どんどん苦しいし、どんどん楽しいし。苦しかった時期の経験が自然とお芝居に生きていたり、時間が経ってやっと人の言葉の意味が理解できたり。例えば、ある監督に言われた「お芝居をする上で、恥をかこうという気持ちが伝わってこない」という言葉は、当時は全然意味がわかりませんでした。

 でも今思い返すと、たしかに殻に閉じこもっていたし、それを破ろうという意識すらなかったなって。そういう気付きの瞬間に、ちょっとだけ視野が開けて、成長を感じます。だから、その時その時だけで生きるのではなく、今の無茶な挑戦が、未来の自分のために必要だと思いながら、一つ一つの表現に熱を注いでいきたいなと思っています。

上白石萌歌(かみしらいし・もか)

2000年2月28日生まれ。鹿児島県出身。11年、第7回「東宝シンデレラ」オーディショングランプリを受賞し、2012年女優デビュー。ドラマ『義母と娘のブルース』、『いだてん〜東京オリムピック噺〜』、映画『羊と鋼の森』、『未来のミライ』(声優)などに出演。2019年、第42回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。主演するドラマ『ソロモンの偽証』(WOWOW)が10月3日よりスタート。2022年前期の連続テレビ小説『ちむどんどん』に出演。J-WAVE『GYAO! #LOVEFAV』でのラジオナビゲーター、adieuとしてのアーティスト活動等、多方面での活躍を見せる。

映画『子供はわかってあげない』

もうすぐ夏休みのある日、高校2年の美波は水泳部の練習中に、ちょっと変わった書道部員のもじくんと学校の屋上で出会う。お互い大好きなアニメの話題で盛り上がり、意気投合するも、ひょんなことから離別した美波の父親捜しの旅が始まる……。

8月20日(金)全国ロードショー
8月13日(金)テアトル新宿先行公開

出演:上白石萌歌、細田佳央太、千葉雄大、古舘寛治、斉藤由貴、豊川悦司
監督:沖田修一
脚本:ふじきみつ彦、沖田修一
音楽:牛尾憲輔
原作:田島列島『子供はわかってあげない』(講談社モーニングKC刊)

2021.08.19(木)
文=須永貴子
撮影=鈴木七絵
スタイリスト=道端亜未