③観る人をやさしく包む絵画たち

 今井麗さんの作品を初めて目にしたのは植本一子さんのエッセイ『かなわない』のカバー。一読目はエッセイの内容に心を奪われてしまい、正直カバーにはあまり注目できていなかったのですが、何度か手にとって再読するたびに、カバーに描かれたバタートーストに惹きつけられていきました。

 朝のひとときを閉じ込めたようなバタートーストの絵で今井さんという存在を知ってから、パンを食べるたびに、今井さんのことを頭に浮かべるように。本棚に置いておきたいという理由で今井さんが表紙を手がけられている「暮らしの手帖」も買い始めました。全く関係ないですけど、「暮しの手帖」で連載中の武田砂鉄さんの「今日拾った言葉たち」、面白いですね。

 新しい画集『MELODY』の完成を記念した展覧会がPARCO MUSEUM TOKYO開催されています。今井さんの作品世界を体現したような展示会場も素敵なので、ぜひ足を運んでみてください。

「ULALA IMAI EXHIBITION MELODY」

会場 PARCO MUSEUM TOKYO(渋谷PARCO 4F)
住所 東京都渋谷区宇田川町15-1
電話番号 03-6455-2697
期間 2021年6月25日(金)~7月18日(日) 11:00-20:00
※入場は閉場の30分前まで
※最終日18時閉場
※営業日時は感染症拡大防止の観点から変更となる場合がございます
入場料 一般 500円 学生 400円 ※小学生以下無料
https://art.parco.jp/

④週末はパンでも焼いてゆっくり過ごそう

 「パンやケーキは無理して作るよりおいしい店で買えばいい。その方が生活のクオリティも上がる」と、常々思っているのですが、そもそもおいしいパン屋さんがないパン屋不毛地帯に住んでいるせいで、家でパンを焼きたい欲求にとりつかれることがあります。

 そんな私の欲求にやさしく寄り添ってくれるのは、料理家・真藤舞衣子さんの『粉と水だけの自家製酵母で作る はじめてのサワードゥ ブレッド』。

 サワードゥとは、本のタイトルにもある通り粉と水だけで作る発酵種。余計なものが一切入っていないので、粉の香りがダイレクトに楽しめるんです。家庭ごとに浮遊している菌が違うからか、同じレシピで作っても味が違うそう。実家や友達の家でも勝手に作ってみようかな。サワードゥを作るのに少し時間がかかりますが、生き物を愛でるように発酵を様子を観察するのも楽しいですよ。

『粉と水だけの自家製酵母で作る はじめてのサワードゥ ブレッド』

真藤舞衣子著
文化出版局 1,870円

⑤今村夏子の新作

 映画『花束みたいな恋をした』の麦くんと絹ちゃんのように「群像に掲載されてた今村夏子の新作、良かったよ」と、報告する相手がいないのでここのスペースで紹介させてください。

 甘いものがあまり好きではないのにお菓子工場で働く友加里は、ヘルパー事業所の副所長として働く夫の幹也と老犬と、古い一軒家で穏やかに暮らしています。

 でもこの友加里さん、なんだか思い込みが激しく、自分がいつも良い判断をできる正しい人間であることを疑っていない様子。近所の小学生タムが、やせ型でいつもお腹をすかせているという情報をもとに、あの子は虐待を受けているはずだと決めつけてしまい……。

 「それはどうだろう」と疑問を呈する夫に、「思ってくれるよ絶対。ね、そうしようよ、ね、ね、ね」をつめよる友里加の様子は、不穏そのもの。恐怖の「ね」の三連発!

 電車で足を広げて座っている男をみると「あなたが脚を閉じれば一人座れるんだよ」と、そいつの脚を傘で殴りつけたくなってしまうほど思い込みが激しく、正義感が暴走してしまうタイプの私でも「そのくらいにしといたほうがいいのでは……」と思ってしまう友里加の行動ですが、私たちも自分が正しいと信じていることを「ね」の三連発で押し通してしまっていないか?と言われると、それはまた疑問が残るところではありますよね。

 この物語に「良夫婦」というタイトルをつける、今村夏子さん、さすがすぎます。夫婦が住んでいる家の門扉の暗証番号が4122(ヨ、イ、フー、フ)だったのは、声出して笑っちゃいました。

「群像」2021年7月号

講談社 1,450円
http://gunzo.kodansha.co.jp/

Column

週末何しよう? 過ごし方5選

興味あることは沢山あるけど、「To Do List」じゃ重すぎる、スローなウィークエンドにしてほしい。そんなあなたのために、ゆるーい週末の過ごし方ガイドをCREA編集部が5つピックアップしてみました。

もちろん、今週末は部屋でゆっくり寝て過ごしちゃう、なんてのもOK。だって、週末はまた来週もやってくるんだから。

2021.07.01(木)
文=CREA編集部