少し窮屈な暮らしが続くなか、旅への憧れは誰しもつのるばかり。次に旅するならば、ホテルでの滞在時間も余さず、存分にその地を満喫したいものですよね。

 そんな思いに応えてくれるリノベーションホテルが各地に生まれています。街の片隅のスタイリッシュな隠れ家ホテルで、ローカルな空気に触れるひとときを過ごしてみませんか?


すぐそばにアートを感じる非日常の東京ステイ

◆KAIKA 東京 by THE SHARE HOTELS

 「新しいローカルに出会う場所 You in Local, New in Local」。

 ザ シェア ホテルズは、地域の人々と旅行者がつながる場と宿泊機能を併せ持つリノベーションホテルです。その土地の伝統と現代性を掛け合わせた新しい文化のプレーヤーたちと共に、ローカルの新しい魅力をシェアする施設としてホテルをデザイン。ゲストがローカルの今の空気を感じながら、街の人々と出会い、その地ならではのユニークな活動に参加することもできる集いの場を目指しています。

 そうしたコンセプトを色濃く表しているのが、東京都墨田区に2020年オープンした「KAIKA 東京 by THE SHARE HOTELS」。

 築54年の地下1階地上6階建ての倉庫ビルを再生したとあって外観こそシンプルですが、一歩足を踏み入れるやいなや、目に飛び込んでくるのはフェンスに囲まれた大きな段ボールで作られたアート。

 そう、ここはなんと、アート作品を公開保管しておく「アートストレージ」(収蔵庫)とホテルが融合したコンテンポラリーアートの新しい拠点なのです。

 1階、地下1階の共用部に設えたアートストレージは、日本を代表する6つのアートギャラリーが公開保管スペースとして利用。そのため、普段は見ることができないアートギャラリーのバックヤードをのぞくという特別な鑑賞空間を体験できるのです。

 「KAIKA」という名には、収蔵庫を公開する「開架」という意味に加え、日本のアート文化を広め「開化」させたい、アーティストの才能の「開花」をサポートしたい、という想いが込められているそう。

 館内共用部のアート作品は、「KAIKA TOKYO AWARD」にて公募。絵画、陶芸、彫刻などの235作品の中から選ばれた受賞作品・入選作品が2022年3月末日まで約2年間、館内各所に収蔵・展示されています。また、アート・コミュニティプラットフォーム「ArtSticker」でも公開されています。

 ステイ中は、廊下や階段など思わぬところでアートに出会い、思わず足を止めてしまうこともしばしばです。本来であればギャラリーに足を運ばなければ鑑賞できない現代アートをこんなに身近に見ることができるとは、まさにこれまでにない贅沢な非日常体験。ストレージ収蔵作品は時期によって変わるため、訪れるたびに新たなアートを鑑賞できるのも魅力です。

 また、ぜひ立ち寄ってほしいのが、ロビーに隣接する「BAR KAIKA」。お茶の楽しみ方を現代に提案する「EN TEA」が厳選した高品質の茶葉を使用した日本茶やカクテル、地域のコミュニティカフェとして知られる「東向島珈琲店」がセレクトしたシングルオリジン豆によるコーヒーなどが揃っています。

 アートストレージの奥に広がる静かな空間で、日本茶の香りをゆっくり堪能すれば、日頃の疲れがスッと遠のいていくのを感じます。

 客室は、ストレージ空間の雰囲気を継承した色や素材により、落ち着きと心地良さを感じるデザインに。一人でもゆったり寛げるスタンダードタイプから、2段ベッドを備えた広めのタイプまで10種類が揃い、人数と目的に合わせてセレクトができます。

 和室タイプの「Japanese-style Room」があるのもユニーク。窓外に東京スカイツリーを眺めながら、ソファベッドで読書……なんていう過ごし方ができる部屋もあり、思い思いのステイが楽しめます。

 ホテルにはレンタサイクルも用意されており、ちょっと足をのばして浅草観光を満喫したり、地元の老舗グルメを味わったりするのもおすすめ。アートに触れ、地域の文化を再発見し、のんびりステイでストレスを解消する。

 こんな時代だからこその東京マイクロツーリズムに、うってつけのホテルといえるのではないでしょうか。

KAIKA 東京 by THE SHARE HOTELS

所在地 東京都墨田区本所2-16-5
電話番号 03-3625-2165
https://www.thesharehotels.com/kaika/

取材・文=張替裕子