「ファスナー」/静かに諦めの境地に達した嫉妬心ソング

 お次の「ファスナー」(2002年発売『IT'S A WONDERFUL WORLD』収録)では冒頭から、【昨日 君が自分から下ろしたスカートのファスナー およそ期待した通りのあれが僕を締めつけた】と歌います。一夜をともにした女性の“慣れた所作”にチクッと揶揄を入れつつ、情事を生々しく振り返るのです。

 一方サビでは、【きっとウルトラマンのそれのように 君の背中にもファスナーが付いていて 僕の手の届かない闇の中で 違う顔を誰かに見せているんだろう】と、ファスナーを比喩に使います。自分の想い人には清廉な表向きの顔だけではなく裏の顔があり、ようはビッチであると暴露。

 はい、嫉妬心。

 しかし、この歌のラストのフレーズは、【惜しみない敬意と愛を込めてファスナーを・・・】というもの。“僕”の醜いジェラシーは激流ではなく静謐で、いわゆる諦念。ポジティブな悟りなんかではなくネガティブな悟り……この諦めの達観が、非モテの4軍男子心をくすぐりまくるのです。

「UFO」/UFOを言い訳に現実逃避している浮気ソング

「UFO」(2002年発売『IT'S A WONDERFUL WORLD』収録)は、そのタイトルからSFチックな恋物語を想像しがちですが、大間違い。カノジョ持ちの“僕”が別の女性と惹かれ合ってしまうという、ただの浮気ソングなんです。

 歌の冒頭で、【「上手くいかないことばかりだよ」と 君が肩を落とすから 気が付けば抱き寄せてた】という“僕”。ですが、【あの日 一緒に見た奇妙な光 アダムスキーだなんだと茶化して帳消しにしたいんだろう】と、“君”はUFO話でごまかして、うやむやにしようとします。

 つまり、わざわざタイトルに持ってきた「UFO」は、【腫れ物を触るみたいな 核心を避ける話題】でしかないのです。

 そして、【迷いも苦しみもない世界へと誘う あのUFOが出てくる夢】を思い出し、“僕”が【UFO来ないかなぁ】と呟いて終曲。

 はい、現実逃避。

 恋人と別れられずにいる“僕”ですが、迷いや苦しみから解放されたいと願うだけで、思考停止でUFOにすがる……。情けない。ですがその“マイルドクズ”な感じこそがリアルな人間らしさ。いつもいつも清く正しくなんていられません。

2020.12.06(日)
文=堺屋 大地