恋愛100%の物語を書こうとしていたのに、そこから95%変わりました(笑)

――では、恋愛小説の中で好きな作品やジャンルはありますか?

 森見登美彦さんの『夜は短し歩けよ乙女』が好きですね。

 物語の舞台となっている場所が、ほんまに実在する恋愛小説が好きで、この小説の舞台となった場所にもあちこち行きました。

 京都・祇園花月の出番があるんで、未だに(休憩時間には)よう行ってますよ。

――福徳さんの小説にも実在する場所が出てきますが、ご自身がそういうものが好きだから盛り込まれたということですか。

 それはまったくの偶然です。

 背景が定まり切らなくなったときに、自分が通っていた大学を舞台にしようと思いついて、自分の経験を通して感じたことを登場人物に取り入れたという感じですね。

――書き始めた当初は、恋愛100%の物語だったそうですね。

 そこから95%変わりました(笑)。最初は、恋愛映画を観て恋愛に奮闘する大学生の話やったんです。

 けど、編集の方を交えて何回も改稿を重ねていくうちに、じわじわと内容が変わっていって、執筆から2年半ほど経ったある日、6万字くらい削除されてしまった。

 そこから2日間くらいは何も書けなくて、いわゆるペンが止まったという状態になってしまったんですけど、ひとつの展開――好きな子が待ち合わせの場所に来なかった――を試しに入れてみたら、内容が膨らんで失った文字数分、復活させることができました。

2020.11.15(日)
文=高本亜紀
撮影=平松一聖