歌舞伎界の礼儀を一から教わった子役時代

 子役のオーディションに受かったことで、鶴松さんは歌舞伎と出会います。

 歌舞伎の子役は、こうした劇団に所属している子どもたちがオーディションを受けて出演し、合格すれば男の子だけでなく、女の子も出演することができます。

 歌舞伎は伝統芸能なので、主役に限らず、台詞や動きにいろいろな決まり事があるため、専門家に指導してもらわなければなりません。

 鶴松さんがどうやって教わったのかも伺いました。

 「僕は子役の指導の第一人者だった音羽菊七先生から、演技だけでなく、歌舞伎界の大切な礼儀についても一から叩き込んでもらいました。当時は、先生から口頭で台詞を教えていただくと、それをミミズの這ったような字で紙に書き留めて、それを覚えてから、お稽古していました。

 菊七先生は厳しい方でしたが、愛情を込めて教えてくださる方でした。お化粧は市川八百稔さんという子どもの化粧が上手な方にしていただきました。初めて自分で化粧をするようになったのは、部屋子になってからで、『盲目物語』(2005年12月歌舞伎座)のお茶々役の時です。

 自分で化粧をした後に(澤村)國久さんに直していただくんですが、一日だけ、勘三郎さんから“今日は顔が変だ”と言われたことがあって、僕の化粧が下手だと思われるのが嫌で、“(中村)小山三さんにやってもらいました”とつい嘘をついてしまったことがありました(笑)」

2020.07.08(水)
文=山下シオン
撮影=佐藤 亘
スタイリング=木村厚志
ヘアメイク=AKANE
衣装クレジット=シャツ 19,000円、Tシャツ 9,000円、デニム 24,000円/YAECA (YAECA APARTMENT STORE)