能と歌舞伎と和太鼓が融合
これまでにない芸術作品に

 歌舞伎の舞台公演を映像で楽しむ「シネマ歌舞伎」の新作は、2017年に博多座で上演された『幽玄』を収録したもの。

 歌舞伎界の至宝である坂東玉三郎さんが、かつて芸術監督を務めた太鼓芸能集団の「鼓童」と共演した待望の作品である。

 玉三郎さんは、能楽と歌舞伎という日本の伝統芸能と、和太鼓を中心に創作活動に取り組んで新境地を拓いてきた鼓童を融合させ、この新作をこれまでにない芸術作品として完成させた。

 イントロダクションとして収録されているシネマ歌舞伎のための特別映像では、玉三郎さんの言葉でその過程や作品への思いが語られている。

 自身が主演として舞台に立つだけでなく、演出、映像の編集、監修まで手がけ、その才能と培った知識と経験を惜しみなく注いだ。まさに、表現者としての集大成ともいえる作品なのだ。

2019.09.20(金)
文=山下シオン
写真=岡本隆史、谷内俊文