手稿に描かれた美しき発明は無益な空想ではなく、科学に基づく最先端の実用機械だった。

 フィレンツェ近郊を巡りながら、今もなおダ・ヴィンチの遺産を守る人々を訪ねた。


優美な翼がはばたいた
遠い日を記念する碑

●Villa Montececeri
(ヴィラ・モンテチェチェリ)

 “飛翔”はダ・ヴィンチが最も打ち込んだ研究のひとつだ。鳥と人体を観察し、流体力学を駆使し、人力で空を飛ぶ装置を設計。

 そして完成させた装置に人が乗り、モンテ・チェチェリ(白鳥山)から飛び降りたが、墜落してしまう。

 実験場だった山には記念碑が立つ。一帯の土地を所有する、コジモ・マルコ・マッツォーニ氏が建立したものだ。

 マッツォーニ氏はダ・ヴィンチの叔父が所有していた土地に立つ「ヴィラ・モンテチェチェリ」のオーナーでもある。

 「この土地は私の祖先が手に入れました。聞くところによるとダ・ ヴィンチは、ここによく立ち寄り空を見上げて、飛ぶ鳥を観察していたそうです」とマッツォーニ氏。

 記念碑前にはフィレンツェの絶景が広がる。鳥になろうとした人間は未だ、この空を飛べていない。

Villa Montececeri
(ヴィラ・モンテチェチェリ)

所在地 Piazza Prato ai Pini 7, Fiesole, Firenze, Toscana
電話番号 055-599651
料金 10ユーロ
info@montececeri.it
※見学ツアーは約1時間、4月~10月開催、申し込みは英語のメールにて

Feature

天才ダ・ヴィンチの
美しき技術遺産を巡る

Text=Masami Uwabo
Photo=Yuji Ono
Coordination=Michiko Ohira