京都出身というだけで、その人は揺るぎない美人印象をオーラのように放ってしまう。それはまさに京都の磁場が生んだ、日本が誇る気配美。五感の全てで、人は“京美人”を感じ取るのである。
美人には、明確な基準がない。ある意味、不変の定義もない。だからこそ、“美人印象”というものが、実は圧倒的な力を持ってくるのだ。
つまり、顔だちの黄金比といった数値的なものとは別に、“なんとなく美人に見える”“なんとなく美人に思える”というイメージを色濃く発していること、それこそが、美人の正体であると言いたいのである。
そういう意味で最強なのが、ほかでもない“京美人”ではないかと思う。京都の人というだけで、美人に見える。京都出身という、それだけで美人に思える。私たち女性も憧れを禁じ得ないほど。そこに説明はいらない。京都という土地の空気、地名の響きに何か不思議な力が宿っているというほかないのだ。
いわゆる“磁場”なのだろうか? その地に脈々と続いた美人の系譜が今もどこかで息づいているからこそ、理屈抜きの美人のエネルギーというものが、そこに住まう人、そこに生まれた人の存在美を自然に生み出してしまう。そういうことだろうか?
例えば、名門のお嬢様学校にも、同じような美人印象を作るエネルギーが強烈に宿っている。そこの由緒正しい制服を着ている女子学生はもちろんのこと、その女子校出身というだけで美人の印象を漂わせる。不思議だけれど本当、この美人の磁場は、時代が変わっても揺るがないだけの安定的な力を持ち続けるのである。
五感に届く様々な気配が 京美人を築き上げた
もっと言うなら、京の美人印象は五感に訴えかけるもの。まず何よりも京都弁の耳に柔らかな音の心地よさ。
和服が持つ佇まいの嫋やかさ潔さ、それに伴う所作の粋。さらには京都の水や食、お茶文化が育んだと考えて良い肌のなめらかさ、化粧に頼らない浄化された美しさ、そして香道につながるような匂い立つ気配美、それらが相まって“京美人”という、盤石の美人印象を作っているのだと思う。
さらには、京都の歴史にも等しいほどの、気の遠くなるような京美人の系譜が、まるでDNAのように生来の美を継承させてきたと言っていいが、その最大の舞台となったのは言うまでもなく京の花街。美を競い、艶を競う宿命を背負った女性たちの耽美的な世界は日本が誇る美貌の産地。同時にこの地で育まれた美容の原点ともいわれる技やモノも堂々、現在まで粛々と受け継がれてきている。
例えば、舞妓さんや芸妓さんの肌を磨いてきたのは、絹の手ぬぐい。文字通りのあか抜けた肌を作る働きは、今でいう角質ケアにそのまま繋がっていく。このテクニックを現代に伝えるのは、「絹羽二重(きぬはぶたえ) 珠(たま)の肌パフ」。布において最もきめ細かい絹の表面が余分な古い角質を柔らかく擦り落とすという、プリミティブな美容法は、まさにこの京都で生まれ、引き継がれているのである。
また京都コスメのルーツである「よーじや」さんのあぶらとり紙が、今なおこの分野のトップオブコスメであり続けるのは、“京美容”がまさしく美しさの本質をついた普遍的正解であることを物語る。このあぶらとり紙も時代とともに大きく進化して、今や潤いを与えながら余分な油分だけを取り除く高機能なものも登場している。
元祖よーじやではフェイスマスクも好評。さらには、京美人がお茶によって作られたという説を裏付けるように京都宇治のお茶から得られたエキスを主役とした、お茶のオーガニックコスメ、「コトシナ」も人気を博している。
京美人の魂は、意外なところでも強く強く生き続けるのである。
KOTOSHINA BAL
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齋藤 薫(さいとう かおる)
美容ジャーナリスト、エッセイスト。女性誌で数多くの連載を持ち、化粧品の解説から開発、女性の生き方にまで及ぶあらゆる美を追求。エッセイに込められた指摘は的確で絶大なる定評がある。この連載では第1特集で取材した国の美について鋭い視点で語る。各国の美意識がいかに形成されたのか、旅する際のもうひとつの楽しみとして探る。
Column
齋藤薫さんは、女性誌で数多くの連載を持ち、化粧品の解説から開発、女性に生き方に及ぶあらゆる美を追求している。この連載では、CREA Travellerが特集において取材した国の美について鋭い視点で語っていく。
Text=Kaoru Saito
Photo=Atsushi Hashimoto, Hiroshi Kamaya(still)