精緻なる芸術に驚嘆
あまりにも広大なこの遺跡を目の前にして、途方に暮れてしまうツーリストも多いはず。
そこで、決して見逃してはならない主要な見どころをピックアップするとともに、さまざまな国家および文明の盛衰に翻弄された波乱万丈の歴史をたどる。
この世のものとは思えない奇跡の構築美が目を奪う
エル・ハズネ (El Khazneh)
ペトラの象徴、エル・ハズネ。その名は、「宝物殿」を意味する。エジプトのファラオがこのファサードの頂を飾る壺の部分に財宝を隠したという言い伝えから、そう呼び習わされてきた。
しかし、実際には紀元前1世紀から紀元後2世紀の間に霊廟として建てられたことが、研究によってわかっている。高さ約43m、幅約30mの堂々たる威容が太陽の光を浴び最も美しく輝くのは、朝の9時から11時までの時間帯。
断崖絶壁の谷間をたどる遺跡群へのプロムナード
シク (Siq)
エル・ハズネへと続く細い道が、シク。地殻変動によって切り裂かれた巨大な岩塊の隙間を縫って走る。狭い場所では、道幅はわずか2m。
一方、断崖絶壁の高さは、最大100mにもおよぶ。その壁には、2000年も前に穿たれた用水路の痕跡がしっかりと残されており、古の灌漑技術のレベルの高さを実感することができるだろう。ナバテア人が信仰した最高神・ドゥシャラを祀る祠やさまざまな彫像も点在。
photo:Atsushi Hashimoto
text:CREA Traveller
coordination:Naoko Kimura