ペトラという地名は、ギリシャ語で岩を意味するという。

 その名の通り岩ばかりの土地に、人類はかくも素晴らしい芸術を刻んだ。

 日差しの移ろいとともに表情を変えるこの遺跡は、見る者の心を鷲掴みにする。

正式名称:ヨルダン・ハシェミット王国
首都:アンマン
総面積:約8万9000平方キロメートル
人口:約605万人(2010年)
公用語:アラビア語
宗教:イスラム教(全人口の93%)
通貨:ヨルダン・ディナール(JD)
JD1=約¥113.8円(2012年2月末現在)
時差:日本時間-7時間
電話(国番号):+962

光に応じて表情を変える広大な野外美術館

 世界中に魂をふるわせる遺跡は数あれど、これほど劇的なアプローチを体験できる場所は他にない。

 とてつもない高さの切り立った断崖に挟まれた隘路(あいろ)を進むこと数十分。やがて、岩塊の隙間から少しずつ、建造物の姿が見え始める。満を持して広場に抜けると、こちらの視界いっぱいに、崖を彫り貫いて造られた巨大な神殿の姿が広がる。エル・ハズネである。

世界中の国々から観光客が集まるエル・ハズネ前の広場。しかしここはまだ、広大なペトラのほんのとば口でしかない

 これを皮切りに、広大な野外美術館がその扉を開ける。先人が彫った霊廟、劇場、教会のファサード、そして目を引き付ける天然の岩肌……。

 ペトラを織り成す砂岩は、陽光の具合に感応し、その表情をさまざまに変化させる。薔薇色のグラデーションは、一日見ていても飽くことがない。この地が「ローズレッド・シティ」と讃えられる所以である。

 ペトラは、ヨルダンで初めて世界遺産に指定された場所。さらには、タージ・マハル、マチュピチュ、万里の長城などと並び、「新・世界の七不思議」にも選出されている。

 また、『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』『トランスフォーマー/リベンジ』など、映画のロケ地としても鮮烈な印象を残す。

 人類と自然が手を携えて築いた奇跡を、じっくりと堪能したい。

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photo:Atsushi Hashimoto
text:CREA Traveller
coordination:Naoko Kimura