ジョン・レノン、ミック・ジャガー、
そしてオスカー・ワイルドまでもが
“ご厄介”になった裁判所ホテル

コートハウス・ホテルの門構え。ここから多くの著名人が報道陣の前に姿を現しました。

 ロンドン随一のショッピング街、オックスフォード・ストリートから歩いて2分、人気デパート、リバティは目と鼻の先というロンドン観光の拠点には絶好のロケーションにあるのがコートハウス・ホテルです。この5ツ星ホテルには、その名前からもわかるように、1998年までは裁判所だったという、ユニークな歴史があります。

いまでも「MARLBOROUGH STREET MAGISTRATES COURT」のサインが残っています。(C)Maiko Akatsuka

 いまでも「MARLBOROUGH STREET MAGISTRATES COURT」のサインが残っており、1960年代、1970年代には特に、お騒がせ有名人がこの法廷で裁かれたことで、この建物の外観がたびたびゴシップ紙を飾っていたといいます。

 ジョン・レノンは、わいせつなリソグラフを展示したかどで、ミック・ジャガーもドラッグの問題で、画家のフランシス・ベーコンも大麻所持の件で、それぞれこの裁判所で裁かれているとのこと。さらにさかのぼると、チャールズ・ディケンズがここで新聞記者として詰めていたり、オスカー・ワイルドがクイーンズベリー侯爵を名誉毀損罪で訴えた裁判がここで行われたりと、裁判所の歴史にはそうそうたる名前が並んでいるのです。

ホテルのバーエリア。鉄柵や個室の金属製のドアが、「監獄」ムードを盛り上げます。

 館内でなんといってもおもしろいのが、ホテルのバーです。「The Bar(お酒を飲むバーであると同時に、鉄柵も意味する)」という名前の通り、ここは監獄のあったスペースで、翌日の裁判を控えて被告が収監される場所でした。

バーの個室は、かつての独房そのまま。それぞれの部屋に、この裁判所の歴史を彩る有名人のイラストがかかっています。

 現在でも、当時の独房がそのまま残されていて、バーの個室として使用されています。ミック・ジャガーやジョン・レノンが一夜を過ごしたかもしれないベッドはベンチとして、奥の便座はワインクーラーとして使われているのも驚きです。

文・撮影=安田和代(KRess Europe)