チェコの日本食ブームを追え!
世界各国で次々に起こっている「日本食ブーム」。チェコでも近年、大人気です。1989年に社会主義体制が崩壊したチェコでは、海外のグルメを国内で楽しめるようになったのはここ20年ほどのこと。それまでは「鉄のカーテン」とも言われた東西の壁にへだてられ、海外の珍しい食材などは一切チェコ人の手に届くことはありませんでした。
21世紀に入ると厚い壁もなくなり、海外に出た若者たちが次々と新しいグルメをチェコにもたらしています。そのなかでも日本食はヘルシーであることから、健康志向の人が増えるチェコでは幅広く受け入れられ、暮らしのなかに定着しつつあります。
しかしながら海のない内陸国のチェコ。完全な日本食を提供するだけの食材はありません。かといって、すべて日本から輸入した高価な食材を使うと高級レストラン並みの価格となってしまいます。そこでチェコならではの工夫を凝らしながら、なるべくコストのかからない食材でまかなっています。
プラハにある人気の寿司店「SUSHI TIME」。今夏の新メニューがなかなか面白いです。
日本ではなんてことない焼き海苔でもチェコでは高級品! また焼き海苔が苦手というチェコ人も多く、日本人にはたまらない海苔の香りでも「磯の強い匂い」と嫌う人が多いのです。そこで近年多くの寿司店では焼き海苔を使わない寿司を販売しています。
「SUSHI TIME」はプラハ市内に4店舗を持つ地元っ子に人気の寿司店。チェコで手に入り、チェコ人に好まれる食材を使用して作られる寿司は、私たち日本人の想像を超えるものです。特に今年の夏の新メニューは焼き海苔の代わりに海藻や鰹節、はたまたライスペーパーとレタスで寿司を巻くというユニークなもの。寿司ネタは海老の天ぷらやスモークサーモン、アボカドといったコンサバティブなものから、キムチなどの変わりネタまで多種多様です。
酢漬けの加工食品が一般的なチェコではガリは大変好まれ、寿司の量に見合わないほどたっぷりと添えられます。また西洋ワサビを肉につけて食べるので、ワサビは大得意。さらにたっぷりの醤油に寿司をつけて食べるのがチェコ流です。
この寿司店で意外なお勧めが焼きうどん。牛肉とパプリカとキクラゲがたっぷり入って辛みの効いた焼きうどんの味付けは、日本人には懐かしいソース味。これこそ鰹節と青のりをかけていただきたいところです。
食欲が停滞しがちな夏には、肉が主流のチェコ料理はプラハっ子の胃袋にも少々ヘビー。なので今では、店内の寿司は売り切れもしばしばという人気ぶり。次のシーズンの新作にも期待が寄せられます。
SUSHI TIME
所在地 Bistro QUADRIO-Spálená 2121/22,110 00, Praha 1
電話番号 224-829-390
http://www.sushitime.cz/
※他3店舗あり
文・撮影=クレメントゆみ子