──《Musique & Vin au Clos Vougeot》音楽祭 (2025年6月26日 ボーヌ施療院 Hôtel-Dieu にて)

左:ゴーティエ・カプソン(Gautier Capuçon, チェロ)/右:ユジャ・ワン(Yuja Wang, ピアノ) Photo (C) GEN DE ART
2025年6月26日、ブルゴーニュを代表する文化イベント《Musique & Vin au Clos Vougeot(音楽とワインの祭典)》は第4日目を迎えた。この夜、ボーヌの歴史的建造物である施療院 Hôtel-Dieu の中庭にて、世界的ピアニストのユジャ・ワン(Yuja Wang)と著名なチェリスト、ゴーティエ・カプソン(Gautier Capuçon)による珠玉の二重奏コンサートが開催され、夏の夜空のもと、観客を魅了した。
開演前には、本音楽祭の共同創設者であるオーベール・ド・ヴィレーヌ氏(Domaine de la Romanee-Conti)と、総監督を務めるベルナール・エルヴェ氏が登壇し、温かい言葉で会場を包んだ。「今夜もまた、音楽の魔法が私たちを結びつけてくれることを願います」と語った。

右 オーベール・ド・ヴィレーヌ氏(Domaine de la Romanee-Conti)と、左 総监督を务めるベルナール・エルヴェ氏 Photo (C) GEN DE ART
プログラムのハイライト
演奏会は、エドヴァルド・グリーグ作曲《チェロ・ソナタ イ短調 作品36》で幕を開けた。叙情性に富んだ旋律と、感情が徐々に高まる構成が特徴的なこの作品は、冒頭から聴衆を引き込んだ。後半には、ラフマニノフ晩年の傑作《チェロとピアノのためのソナタ ト短調 作品19》が演奏され、二人の緻密なアンサンブルにより、情熱と繊細さの均衡が見事に表現された。終演後には、事前告知のないアンコール曲も披露され、ブルゴーニュの聴衆への心温まるサプライズとなった。

ゴーティエ・カプソン(Gautier Capuçon, チェロ)/ユジャ・ワン(Yuja Wang, ピアノ)歴史あるボーヌ施療院の中庭にて、世界的な二人の音楽家による夏夜の共演 Photo (C) GEN DE ART

Photo (C) GEN DE ART
音楽祭の理念と使命
《Musique & Vin au Clos Vougeot》は、オーベール・ド・ヴィレーヌ氏とベルナール・エルヴェ氏により2008年に創設された。ブルゴーニュのワイン文化を背景に、若手クラシック音楽家の育成支援を目的とするこの音楽祭では、奨学金の提供、演奏機会の創出、さらには「インストゥルメント・ファンド(楽器基金)」の運営を通じて、将来有望な演奏家たちを支援している。現在、この基金には29本の希少な弦楽器が登録され、無償で貸与されている。
毎年6月には、世界的な音楽家たちがブルゴーニュに集い、ワイン生産者や愛好家、国際的支援者とともに、チャリティー演奏会やオークションなどを通して文化交流と社会貢献を実現している。音楽的卓越性、地域文化、そして慈善活動が融合するこのユニークな取り組みこそが、本音楽祭の核心である。
歴史と音楽が響き合う空間
今回の会場である施療院 Hôtel-Dieu は、15世紀に建てられたブルゴーニュ屈指の歴史的建築物である。開放的な中庭に、石造りの回廊が響板のように音を反射させ、夏の夜風に包まれながら観客は音楽に身を委ねた。華美な演出や商業的装飾を排した会場では、建築・歴史・音楽が静かに調和し、特別な時間が流れていた。

Photo (C) GEN DE ART

コンセプト|Concept
芸術的生活を讃え、文化の継承者たちを世界へ
Honouring living art and the art of living
GEN DE ARTは、日本を拠点とするバイリンガルの国際カルチャーマガジンです。アート、ワイン、美食を軸に、世界各地の卓越した表現者たちの哲学と創造を紹介し、東西をつなぐ文化的対話の場をつくっています。
Based in Japan, GEN DE ART is a bilingual international magazine exploring excellence in art, wine, and gastronomy. Through thoughtful storytelling, it bridges cultures and honours the vision of exceptional creators around the world.