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「男というのは中学生で成長が止まってしまうんです(笑)」

――この映画は、ヘヒョとジェムン(ユン・ジェムン)という中年男性の、初恋をめぐるお話が中心ですね。50代の恋愛映画というのは日本では多くないですし、しかもそれが直接的なラブストーリーではなく、かつての恋についてひたすら語り合っているのが面白い。50代にして恋愛を語る役を演じるのは、どんな感じでしたか?

クォン・ヘヒョ おっしゃる通り、50代半ばの中年男性が初恋について語るという映画です。彼らは福岡に初恋を探しにきたのか、なんなのか。観る人、世代によってはちょっと理解に苦しむことかもしれませんが、二人がだらだらと話をしているうちに、自然と恋愛論みたいなものになっていくんですね。

 日本ではどうかわかりませんが、一般的に韓国では男というのは中学生で成長が止まってしまうんです(笑)。気持ちは10代のままで、おじさんになっちゃうんですよ。だから、本人たちの肉体はもう中年なのに、心は10代の頃のままで過去の初恋について語っている。

――映画を観ていると、二人が大学生のように見えてくる瞬間がありました。意識して、学生っぽさを出していたんですか?

クォン・ヘヒョ そんなつもりはないんですよ(笑)。ただ、私たち二人はいつもあんな感じなんですよ。ユン・ジェムンさんと私は若い頃から、演劇の舞台を数々一緒にこなしてきた仲間なので。

――映画にはスニという名前しか出てこない初恋の相手も、大学の演劇サークルで一緒だったという設定ですが、クォン・ヘヒョさんと妻のチョ・ユニ(『あなたの顔の前に』)さんも、大学の演劇サークルで知り合ったそうですね。

クォン・ヘヒョ 僕と妻だけじゃなく、ユン・ジェムンさんご夫妻もそうなんです。演劇仲間と結婚したんですよ。

――演劇の世界というのは特別な絆が生まれるんでしょうか?

クォン・ヘヒョ それはあると思います。舞台演劇というのは、すごく制限がある中で表現する芸術なので、その人の奥の奥まで見てしまうようなところがあるんです。何度も繰り返し会いますし、演劇の世界は恋愛に発展することも多いと思いますね。でも、実は離婚も多いんですよ(笑)。

――2022年10月の釜山国際映画祭では、クォン・ヘヒョさんが主演されたホン・サンス監督の『トップ』(原題)を拝見しました。チョ・ユニさんとご夫婦で出演されていますが、ここまで本格的に共演したのは初めてだったと思いますが、いかがでしたか?

クォン・ヘヒョ 『それから』、『あなたの顔の前に』などホン・サンス監督の映画4本で、妻とは共演してきました。でも、おっしゃるように今まで一緒のシーンは少なくて、本格的な共演というのは初めてです。でも、我々は妻の前でも、他の人とキスをしろと言われればキスをする職業ですから、妻と共演しても普段通りですよ(笑)。恥ずかしさとかは特に感じなかったですね。

2023.02.25(土)
文=石津文子