映画『ジュラシック・パーク』が撮影された熱帯植物園

 アメリカ国内に5カ所ある国立熱帯植物園のうち、3つがカウアイ島にある。

 カメハメハ4世の后であったクイーン・エマがこよなく愛したといわれる、気品あるラワイ湾の美しい風景。彼女が夏を過ごした別荘がそのまま残っているラワイの谷。その谷にあるのが3つの植物園のひとつ、アラトン・ガーデンだ。

竹もロバートとジョンの心を捉えたエキゾチックな植物のひとつだ

 1938年に砂糖産業の大実業家、アレキサンダー・マクブライドからこの地を買い受けた、シカゴの大富豪で建築家のロバート・アラトンと芸術家のジョン・グレッグにより、現在のアラトン・ガーデンが築かれた。彼らは、かつて世界中を旅した折に見てきたヨーロッパの彫刻と熱帯の国々で見た植物を集めたばかりでなく、水と彫刻をアクセントとする「屋外の部屋」を作った。そのユニークなアイデアと高い芸術性は造園の「マスター・ピース」といわれる。

ダイアナの像がプールの先の白いパビリオンを見守る庭。ここも「屋外の部屋」として客をもてなすのに使われた

「屋外の部屋」にはサンクス・ギビング・ガーデン、ダイアナ・ファウンテン、マーメード・ルームなどそれぞれに名前があり、客をもてなすための屋外の応接間として折々に宴会が開かれたそうだ。部屋と部屋を移動する通り道では、不思議な格好の熱帯の植物に遭遇する。色鮮やかな花や面白い形の実を付けた木が空も見えないほどに枝を広げる。巨大に成長した「モートン・ベイ・フィグズ」は、映画『ジュラシック・パーク』の中に登場した。

この木の根元で『ジュラシック・パーク』が撮影された。恐竜の卵を発見するシーンだ

 絶滅が危惧される植物や、ハワイ固有の植物の研究、保護なども国立熱帯植物園の大きな役割だ。植物の専門家たちがこの植物園の中で研究と管理を続けている。

波形のみぞを流れる水は、マーメードの像に近づくにつれ人間の心臓の鼓動に近い振動で動いてゆく

 変化に富んだ園内とユニークな造園を見ていると、単に植物園というよりは自然のアミューズメント・パークとでも表現したくなる。園内どこを歩いても、常に心地よい水の流れる音が聞こえている。いたるところに水路や滝、池を組み込んだのはロバートとジョンが最もこだわった点だという。

 水音を聞きながら園内を歩くうちに、自分の体に染み込んだ慌しい日常のペースが徐々に巻き戻されてゆく。自然の中で「癒される」というのはこういう感覚に違いない。

Allerton Garden (アラトン・ガーデン)
住所 National Tropical Botanical Garden, 4425 Lawai Road, Poipu, Kauai HI
電話番号 +1-808-742-2623
ツアー 2~2時間半のガイド付きツアー(要予約)/ビジター・センター出発:9:00、10:00、13:00、14:00(出発30分前までにはチェックインすること)
料金 大人45ドル、子ども(8歳から12歳まで)20ドル、8歳以下は参加不可
URL www.ntbg.org/gardens/allerton-tours.php

梅津美智留 (うめず みちる)
カウアイ島在住24年。イベント、ウエディングのコーディネーター、トラベル誌のライター。
フラ歴は今年で4年目。知れば知るほど面白くなるフラを楽しんでいる

協力:ハワイ州政府観光局
公式サイト www.gohawaii.jp
Facebook www.facebook.com/discover.aloha

Column

4つの島の個性を知る旅。もっと行きたくなるハワイ【カウアイ島】

カウアイ島在住24年のイベント、ウエディングのコーディネーター・ライターの梅津美智留さんが、カウアイ島の文化、おいしいもの、自然を満喫できるアクティビティーなどを紹介します。

2012.11.16(金)