今話題の『無垢の博物館』の世界観に浸れる博物館
最近ではトルコのノーベル賞作家、オルハン・パムク氏が作品『無垢の博物館』にちなんだ博物館をチュクルジュマ通り沿いに設立して話題になっている。12歳も若いフュスンを妄想的に愛してしまった主人公ケマルが、フェティシズム的に集めた彼女にまつわるグッズの数々。実は作品執筆の段階からこの博物館設立のアイデアを温めていたというパムク氏が直々に考案しただけあって、小説の各シーンがビジュアル的に表現されており、その世界にどっぷり浸れる仕立てになっている。読んでいない人でも70年代トルコのコケティッシュなグッズを見るだけで楽しくなってくるだろう。いわゆるチュクルジュマの骨董品屋さんに並ぶ雑貨をきちんと陳列して博物館化したようなイメージだ。チケットは25トルコリラとやや割高だが、トルコ語版『無垢の博物館(Masumiyet Muzesi)』を持って行くと、それが入場料代わりにもなり、スタンプを押してくれる。
古い街並みが人気のこのエリア、実は歴史的建造物も残っている。16世紀にミマル・シナンによって建てられたチュクルジュマモスク、17世紀から残るアー・ハマム、18世紀に建てられたオメル・アー給水所、ファイク・パシャ通りにある石造りの歴史的アパルトマン建築など、古き良きイスタンブールがそのままの生活感で残されている。また、2階部分がせり出した古いトルコ式家屋、そんな窓から外を眺めるトルコのおばちゃん、生活の中にすんなりなじんでいる猫たち、道端に並べられた古家具に座ってバックギャモンを楽しむ店主たち……ここにはゆったりしたトルコ的時間の流れがある。
無垢の博物館
(Masumiyet Muzesi マスミエットミュゼシ)
住所 Cukurcuma Cad. Dalgic Cikmazi, 2, Beyoglu, Istanbul, Turkie
電話番号 +90-212-252-9738
URL www.masumiyetmuzesi.org
開館時間 10:00~18:00 (金曜日は~21:00)
休館日 月曜日
入場料 25トルコリラ (約1100円)
安尾 亜紀 (やすお あき)
イスタンブール在住。イスタンブール大学大学院女性学研究所卒。女性誌や料理誌、報道関係まで幅広い分野でライター・コーディネーターを担当。トルコの「おいしい・楽しい・新しい」を中心に、All Aboutトルコ・イスタンブールでも情報発信中。
text&photographs:Aki Yasuo