レストランで、特産の植物を使ったメニューをいただく

 Tai O Lookoutは旧警察署の屋上をガラス張りにしたもので、緑に囲まれ、ほどよく日差しが降り注ぐ開放的な空間だ。ギャラリーも兼ねており、店内に飾られた作品はすべて香港のアーティストのもの。家具はアンティークで、昨年9月末に閉店したペダービルのChina Tee Clubから寄贈された。ここで再会するとは嬉しい驚きだった。

レストランTai O Lookout

 レストランではタイオー特産の蝦醤を使ったチャーハンやポークチョップサンドがおすすめ。同じく特産の紫貝天葵という植物(体の熱を取る効能があるとされ、アカ紫蘇に似た葉)で作った飲み物は漁村側の屋台でよく売られているがTai O Lookoutでは、この美しい色を持つ葉を使ったオリジナルのチーズケーキも人気だ。

シグニチャーカクテル

 また、レストラン内のバーエリアはParrot's Nestと呼ばれる。 厳しい勤務明けの緊張と疲れを癒す娯楽施設として、警察署内には伝統的に必ずバーが設置されているのだそうだ。Parrot's Nestは当時の施設名。紫貝天葵を使ったオリジナルカクテルも楽しめる。

 緑に囲まれた美しいホテルとして生まれ変わった今、水上警察時代の名残は施設の一部として溶け込んでいる。レストラン脇のテラスには監視用の塔があり、ホテルグッズを売る小さなオフィスには独房がそのまま残されている。ホテル前の斜面にはいくつものカノン砲、客室前にはサーチライト、白壁にフレンチウインドーが映える客室の新しい家具も、かつての位置に忠実に置かれ暖炉は当時のままだ。

漁村では乾物を多く売っています

 かつてタイオーの村では、警察署に行くことを「坂道を上る」と言っていたそうだ。坂道とは旧水上警察署、つまりこのホテルの急な坂のことである。お世話にならずに済むに越したことはないが、今よりずっと市内と隔絶された時代にあっては、漁民と水上警察の結びつきは相当に強いものがあったのだろう。

 現在、ホテルには村出身のスタッフも多く、オープン当日には当時の警察官たちも招かれて旧交を温めたそうだ。またホテル主催のツアーに参加すれば、通訳と解説付きで村の名所旧跡を訪れたり、漁民の家を訪ねることもできる。再び、坂道の上の館と漁村の交流が復活したのだ。

 このホテルに来るチャンスがあるのなら、見学ツアーに参加したり、オリジナル書籍「Old Tai O Police Station」や客室で見られるビデオで、少しでも予備知識を得ることをおすすめしたい。ホテルだけでなく、タイオーの漁村が一気に身近なものになるだろう。

漁村からホテルのある半島を見る

TAI O HERITAGE HOTEL
住所 Shek Tsai Po Street,Tai O,Lantau Island
電話番号 +852-2985-8383
予約電話番号 +852-2985-8008
FAX +852-2985-8881
交通 東涌ライン終点 東涌駅バスターミナルから大澳行き⑪番バス終点下車が便利。終点脇からボートあるいは徒歩20分

久米美由紀(くめみゆき)
東京より香港暮らしの方が長くなった在住フォトグラファー。街中だけでは飽き足らず、海の底、山の中のモノまで撮って、食べ尽くします。

Column

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text&photographs:Miyuki Kume