若手料理人が次々と独立を果たす近ごろの京都。

 確かな技をもちつつ、個性はしっかり打ち出す。その加減はどの店も絶妙で開店と同時に予約困難な店となってしまうのも納得せずにはいられない。

 予約が取れたら京都へ、そんな楽しみ方も良いものだ。


膳の上に季節を写し取る
華やかな八寸

●ぎをん福志(ふくし)

杉の木地八寸盆に盛り込まれて軽やかに春を告げる八寸。酒を注げば鳥の声がする鳴き徳利と、飲めばさえずる杯と共に春のもてなし。

 喧噪の花見小路通から西へ。少し道を入っただけで風情と静けさが色濃く残る、いかにも祇園らしい通りに店を構える。

 店主・福士卓義さんはカウンター割烹の草分けで、長らく料理長を務めたキャリアの持ち主。

樹齢200年という檜の一枚板が贅沢なカウンター。

 「日本料理は食材にだけお金をかければいいのではありません。料理と共に器や花で時節をしっかり出すのが何よりも大切なこと」と、茶懐石の流れを汲むコースを作り上げる。

“赤貝と春野菜のみぞれ和え ジュレ酢がけ”。大樋長左衛門の器が春らしさを引き立てる。

 なかでも季節を写した八寸の華やかさはひときわ。

 花見の宴をイメージしたこの日の八寸は、桜葉に包んだ寿司や花見団子を模した串などを盛り込み、花びらに仕立てた百合根や生姜を散らし、桜の小枝を添えた。

 まさに春爛漫。京の春景色が皿の上に再構築されている。

“蛤真丈の椀物”。料理はすべて22,000円のコースから。

 器も田端志音の乾山写しや大樋長左衛門など、存在感を放つものを揃える。

 とはいえ、かぶら蒸しのぐじを味噌漬けにしてしのばせるなど、カウンター仕事で培われた柔軟な発想も併せもつ。

田端志音作・乾山写しの皿に盛り込んだお花見点心。桜葉寿司は明石鯛の昆布締めと穴子白煮。写真は3人前。

 正統のなかに潜むアレンジもまた楽しい。様々に日本料理の醍醐味を堪能できるひとときを約束してくれる一軒だ。

店に着くまでの風情もまた魅力。

ぎをん福志(ふくし)

所在地  京都市東山区祇園町南側570-120
電話番号 075-354-5314
営業時間 17:30~19:30 最終入店
定休日 日曜、祝日
※要予約。おまかせコース 18,000円~
http://gion-fukushi.jp/

Feature

今の京都で輝く
若手料理人の新店へ

Text=Mako Yamato
Photo=Makoto Ito

この記事の掲載号

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